もう悩まない!人材採用&育成のコツを解説 Vol. 21 タイ人事相談室

求人・採用、研修、勤怠管理、労務・給与等から、備品購入、社内環境の整備まで幅広い業務を担う人事総務部は、縁の下の力持ちとして会社全体をサポートします。
Toyota Tsusho Electronics (Thailand)とTOMEN Electronics (Thailand)が2018年3月に合併し、再スタートを切った TOYOTA TSUSHO NEXTY ELECTRONICS (THAILAND) 人事総務部門の責任者を務める楠本 浩史氏に、タイ人管理者だけでなく、タイ人スタッフの相次ぐ離職に関する苦労や組織改革の進め方についてお話を伺いました。

楠本浩史
TOYOTA TSUSHO NEXTY ELECTRONICS (THAILAND) CO., LTD.
大学卒業後、日本で通信系事業会社に入社し、管理業務を約4年経験。その後、欧州でMBAを取得し、日本へ帰国。人事業務(採用、育成、MBO運用等)を約2年経験後、現在の会社に2007年に入社。人事管理・企画業務を一通り経験し、現在は人事総務部門の責任者を務めている。

「タイ人人事」を考える(前編)

下川 タイ人幹部候補の採用について教えて下さい。

楠本 売上に直結しない間接部門の人事ですが、経営トップは人材の重要性を認識しています。手間暇を惜しまず、タイ人スタッフを育成した結果、現在は当社の3事業のうち、2事業でタイ人がトップを務めています。

1名は日本で10年以上の勤務経験があり、2015年にリファラル採用(社員に人材を紹介・推薦してもらう手法)を通じて入社し、17年より事業部長のポストについています。

もう1名は当社の創業時(05年)に通常の中途採用者として入社し、13年かけて事業部長に昇進しました。日本でも数年間の勤務 経験があります。

両名の共通点は日本語や管理者としての能力を有しているだけでなく、日本特有のマネジメントや意思決定プロセスを理解していることです。日本に本社がある海外拠点ですから、本社とのコミュニケーションが必須で、日本人のような感覚を持ったタイ人であることが両名の強みです。もちろん、事業に関わる知見を有していることは言うまでもありません。

当社として留意することは、これらのポジションの職務に何が求められているかを明確にすることと、キャリアパスを示すことです。幹部候補と言いながら、重要なポストは日本人もしくは日本人駐在員が占めてしまわないよう常に意識しています。また、社内で計画的に幹部候補を育成できる仕組みをどのように整えるかということと、リファラル採用を確実なチャネルとして定着させていくことが課題です。

下川 現地採用の日本人の方は、どのように活躍されていますか。

楠本 現在、20名の現地採用の日本人がいます。エンジニア、総務、営業などの職種に就いており、若い方でも責任のあるマネジメント職に関わるケースが多いです。一定の知見や経験は必要ですが、日本なら数十年をかけて就任する役職に登用されています。このように若くてもマネジメントの経験や複数の作業を同時にこなす能力を磨くことを通じて、自身の成長スピードを加速させて、活躍している方が複数います。 加えて、技術翻訳者、日本語講師など特殊技能を持った方々も正社員として雇用しており、能力を十分に発揮しています。

(ArayZ1月号に続く)

 


下川ゆう yu shimokawa
en world Recruitment (Thailand) Co., Ltd.
日系チーム チーム・マネージャー
立教大学卒業。大手人材紹介会社の東京本社で経験後、2009年に来タイ。以来、在タイ日系企業への人材紹介に従事。顧客企業の組織発展のための採用支援を得意とし尽力している。

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