聞きたくても聞けなかった、タイの税金事情

移転価格税制-後編-

移転価格税制-後編-

前回のコラム(2019年2月号)で売上高が2億バーツを超える法人については移転価格文書(及び付表)の作成が必要となる旨について記載しました。今回のコラムでは移転価格税制の本質について解説していきます。

【本質的な部分】

①問題点:関連会社間取引の値付けは親会社が自由に決めることが可能

自由な値決めによって日本に利益を付けるか、タイに利益を付けるかという恣意的な利益操作が可能となります。このような恣意的な利益操作を行わせないために移転価格税制が整備されました。

②検証方法:価格の検証は第三者が利用している価格又は第三者の利益率によって検証

「親会社の恣意的な値付け」と対極にいるものが「第三者による値付け」です。そのため移転価格税制における検証とは、関連会社間取引の価格(又は利益率)が第三者取引の価格(又は利益率)と同様だと証明することにあります。

③課税方法:グループ内取引の価格と第三者取引の価格に差異があれば、その差額に対して課税

移転価格課税はその追徴課税額が破格になる傾向にあります。例えばタイ子会社(売上高:2億バーツ)が日本親会社に利益を移転しているとして、タイ税務当局から各年の売上高につき5%の更正を受けたとすると、MAXで3千万バーツ(5年間遡及)程度の税金を支払わなければなりません。

④対応策:移転価格ポリシー及び移転価格ドキュメントの作成

税務当局と戦うためには税務調査(移転価格調査)において反証できる書類を用意しておかなければなりません。ポイントは利益操作を排除した理論構築(移転価格ポリシー)があり、そのポリシーに則ってビジネスを行い、その結果の決算数字に問題がない(移転価格ドキュメント)というストーリーがあることです。

つまり移転価格ドキュメントを作成するだけではなく、将来の移転価格リスクをどのように逓減していくかの検討(移転価格ポリシー)が多額の移転価格課税を受けないため非常に重要となります。


J Glocal Accounting Co., Ltd.
Managing Director
坂田 竜一

大学卒業後、証券化に特化した会計事務所勤務を経て2009年来タイ。大手日系会計事務所で5年間勤務し、日系金融機関ほか多くの日系企業の会計・税務・監査業務に従事する。2013年12月、J Glocal Accounting Co.,Ltd.を設立、タイと日本の会計・税務の専門家として日系企業へのサポートを行う。
www.jga.asia

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