JICA(国際協力機構)×バンコク日本人学校の国際理解学習 日本のODA事業現場を社会見学!

JICAタイ事務所では、バンコク日本人学校の中学1年生に対し、日本のタイに対するODA(政府開発援助)について学習、現場見学を行う「国際理解学習」を毎年実施している。見学先はインフラ施設、大学の研究室、聾学校など6コースに分けられ、総勢約200名の生徒が参加。レムチャバン港とバンケン浄水場の2コースを同行取材してきた。

レムチャバン港「輸出入の現場をみてみよう」


ポートタワーから見えるレムチャバン港。A、B、Cの3つのエリアに分けられている


生徒たちからの質問に答える伊藤さん

日本政府はチャチュンサオ、チョンブリ、ラヨーンの3県にまたがる「タイ東部臨海開発」に対して、1980年代から90年代初頭、開発計画の策定段階から技術協力を実施するとともに、港湾、工業団地、水道、鉄道、道路などの整備のため16事業、総額1,787億円(貸付承諾総額)にもおよぶ円借款により全面的な支援を行った。タイの経済が悪化した85年には東部臨海開発計画の一時凍結が決定されたが、同年のプラザ合意後には経済が好転、計画は実現に向けて一気に加速し、91年10月にレムチャバン港が完成する。

自動車輸送船を見学

レムチャバン港を案内してくれたのは、NYK RORO (Thailand) Co., Ltd.の伊藤嘉崇さん。ポートタワーの展望台からレムチャバン港を一望すると、一際目に入ってくるのが自動車だ。隣接される工場団地には三菱自動車の工場もあり、タイ国内で製造された自動車がここから世界に輸出されている。
NYKが運航する全長約200m、全幅約32mの自動車輸送船では、自動車の積み込み作業を見学した。作業員が1台ずつ前後30cm(バンパーとバンパー間)、横10cm(ミラーとミラー)の間隔で駐車、ベルトで位置を固定していく。今回のラムチャバン寄港では、約4,800台の車両を1日半かけて積み込む。同船は中東からタイを経由して日本に行き、最終的には中南米へ向かう予定だという。
普段は入れない操舵室では、生徒たちが興奮した様子で見学を行った。船長でもある伊藤さんは、見学の最後に「君たちの中から将来、一緒に航海してくれる仲間ができたら嬉しく思う」とメッセージを送った。


自動車の積み込みを見学。次から次にスピーディーに駐車されていく


自動車を1台ずつベルトで固定

バンケン浄水場「バンコクの水が飲めるようになるまで」

東京ドーム約24個分、700ライもの敷地面積を誇るバンケン浄水場

首都水道公社MWA(Metro- politan Waterworks Authority)が運営するバンケン浄水場は、チャオプラヤー川やメークロン川からの取水を安全な飲用水に浄水し、バンコク都と周辺3県に水道水を供給している。
日本政府はこのバンケン浄水場に対し、1979年より浄水能力の拡張に係る協力、上水道施設の整備、人材育成など、円借款による支援を行ってきた。2009年に始まった第8次プロジェクトは今年3月に供与が終了する予定で、今回の拡張工事により浄水処理能力は440万m3/日に増加、その規模は東南アジア最大級を誇る(東京都水道局朝霞浄水場の処理能力は170万m3/日)。

日本の技術をタイで体験

バンケン浄水場を案内してくれたのは、JICAタイ事務所所員の大塚高弘さんと、同所で企画調査員を務める遠藤康之さんのお二人。浄水処理施設を一周するツアーでは、MWA科学者のスンタリー・スパコーン・スミスさんによる解説のもと、水質検査室から、pHを整えるための塩素タンク、配水ポンプ室、沈殿池、ろ過池、 貯水槽、中央コントロール室までを見学した。
次に訪れた水道技術者センター(MWAIT)は、1985年にJICAの無償支援協力で建てられた施設で、チェンマイ県、コンケーン県、ソンクラー県と全国に4拠点ある。ここでは日本の水道局が有する水供給計画、水道配管の維持・管理、運営などのノウハウが受け継がれており、JICAとMWAではこれらの研修を継続するMOUを締結、現在も東京、大阪、名古屋の水道局と派遣・研修を 行っているという。施設内には研修用のミニプラントのほか、地下水道管の漏水検査を実習する研修場が備えられており、生徒たちは実際に現場で活躍するタイ人による指導を受けながら体験学習を行った。


原水のポンプ室。ここから沈殿池に送水され、浄化作業が進められる


探知機器を使って地下水道管の漏水を見つける研修を体験!

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