ビジネス・経済 2019.04月号

【中国】中国、外貨確保に不安= 対外戦略に影響も(上海支局 佐藤 雄希)


 経済の構造変化に伴い、中国で「外貨確保」をめぐる不安が頭をもたげてきた。圧倒的な資金力で国際的な影響力を増してきたが、高齢化や貯蓄力の低下、過剰債務といった問題が資金繰りを圧迫。外貨の稼ぎ頭だった経常黒字は急激に縮小し、政府が推し進めるシルクロード経済圏構想「一帯一路」など対外戦略に影を投げかけている。

経常収支、赤字化も

 「今年は四半世紀ぶりに経常赤字に転じるかもしれない」。最近、中国ではこうした見方が広がり始めた。折しも貿易不均衡をめぐり、米国との対立が激化したばかり。地元メディアの多くは、「経済発展で購買力が向上し、内需が拡大した」「貿易摩擦が和らぐ」と好意的に報じている。

 国家外貨管理局によると、2018年の経常黒字は前年比70%減の491億ドルと、15年ぶりの低い水準に落ち込んだ。国内総生産(GDP)に占める割合は0・4%に低下。対GDP比で10%近い黒字を計上し、不均衡の元凶として世界的に非難を浴びていた10年前と比べると隔世の感だ。税関総署によると、モノの貿易黒字は16%減の3518億ドル。そのうち対米貿易黒字は17%増の3233億ドルと、8割強を占めた。対米黒字が失われると、大幅な経常赤字に転じる計算だ。

 ただ、中国は14億の人口を養い、経済を維持するため、今後も大量の物資を輸入しなければならない。対外依存は、原油が7割強、半導体や大豆が9割近くに達する。「基軸通貨を持ち、エネルギーから食糧、ハイテク製品まで自給できる米国と決定的に異なる」(国際金融筋)。必要な外貨をどう確保していくか。重い課題がのしかかる。

衰える貯蓄力

 経常黒字縮小は、海外旅行の急増などでサービス貿易の赤字が拡大したことが、直接的な原因だ。経済発展で消費力が増したとも言える。しかし、高齢化や住宅バブルなどで「貯蓄力が衰えた」ことこそ、より根本的な原因だ。

 国家統計局によると、13年末に10億人強だった労働適齢人口(15~59歳)は18年末、9億人弱まで減少した。27年ごろには、全体人口が減少局面に入る可能性も指摘されている。

 一方、社会科学院によると、最近は住宅価格高騰やローン返済負担増が、家計の可処分所得を圧迫する傾向が強まっている。18年の中国新築住宅平均価格は前年比12%上昇。上昇率は09年(25%)以来の高さを記録した。

 中国メディアによると、09年6月には30%近くに達した金融機関預金残高の年間伸び率は、18年2月に9%を割り込み、19年1月は7%強まで低下した。上海の40代会社員は、「住宅を買うのに必死な人に、貯金する余裕などない。お金に余裕のある人は不動産に投資するので、どちらにしても貯蓄には回らない」と話す。

対外戦略に影響も

 経常黒字で外貨が稼げないとなると、支出を減らすか、海外から投融資の受け入れを増して、外貨を確保するほかない。中国当局は外貨準備が急減し、人民元安や資本流出に懸念が高まった16年末ごろから外貨取引規制を強化。17年夏には積極的な対外投資で注目を浴びていた巨大民間企業グループに対する経営指導に乗り出すなど、「外貨流出」に目を光らせるようになった。

 他方で、国内の金融機関に対する出資規制や、株式や債券への投資制限を緩和するなど、外貨受け入れに前のめりになっている。経常黒字の縮小を、資本・金融収支の黒字でカバーする構図が定着しつつある。

 ただ、海外からの投融資への依存が高まることは、世界、とりわけ米国の経済動向から国内市場が影響を受ける傾向が強まり、自由な政策を採りづらくなることを意味する。「これまで以上に外国や、海外投資家に配慮した政策を求められるようになる」(日本企業関係者)との見方も出ている。

 外貨不足は一帯一路など、採算を度外視した「政策投資」の足かせとなる可能性もある。政情不安が続くベネズエラでは、200億ドル超ともいわれる融資の回収が危ぶまれている。昨秋に開かれた中国アフリカ協力フォーラムで600億ドルに及ぶ支援を打ち出した際は、一部で「どこにお金の余裕があるのか」などとの批判が出た。

 高齢化が進む日本は経常黒字ではなく、配当金など対外投資が生み出す収益で外貨を確保する経済構造に転換した。中国でも湯水のようにお金を使えた時代は終わりを迎え、投資先を厳しく選別する傾向が強まるかもしれない。

※この記事は時事通信社の提供によるものです(2019年3月5日掲載)。

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