法務・会計・税務 2018.11月号

インテリジェンス・リレー連載 知らなきゃ損するタイビジネス法務

タイの知的財産権法制

はじめに

先月号より、在タイ専門家によるビジネス法務の解説を掲載させていただいている。第2回となる今回はタイの知的財産権法制を概説する。

1.知的財産権法の概要

タイにおいても、日本とほぼ同様に知的財産権法が存在している。特許法、商標法、著作権法、営業秘密保護法、地理的表示法、種苗法、集積回路回線配置保護法である。なお意匠及び実用新案はタイにおいて、特許法に含まれて規定され保護されている。

特許、意匠、商標の出願ともに出願件数は順調に増加しているが、審査待ちにより特に特許において権利化に時間がかかっている状況である。また、権利行使は民事手続、刑事手続があるが刑事手続きによることが効果・時間の面からも有効である。ただし警察が権利内容を理解し侵害の判断を行うことが困難な特許権は刑事手続きになじまず、商標権及び著作権による権利行使が中心となっている。

2.特許法

発明及び意匠を保護している。出願を行い審査を経て権利化される点は日本と同様であるが、手続きにおいて異なる点も多い。また審査に非常に時間がかかること(出願から権利化まで平均11年8ヵ月)、審査能力の問題から、事実上、対応する外国出願の当該国での権利化及びこの権利と同内容にすることではじめてタイでも権利化できるという点が問題となっている。そのため、日本やアメリカなどの出願を基礎に特許協力条約(PTC)またはパリ優先権を伴う出願を行うことが実務上必要となる。

また権利行使についても2015年度において刑事訴訟が年12件、民事訴訟で年10件という非常に少ない件数しかなく、実効性に欠ける状況である。ただ、今後中長期的な視点から、特許出願を積極的に行っていく必要性があるように思われる。

3.商標法

商品及びサービスに用いる図形や文字列等(標章)を保護する。日本と類似する制度であるが指定商品の記載が、日本より具体的なものとしなければならないこと、記述的商標(識別力がない)であるとされる範囲が広い傾向がある。タイにおいても16年度で年に5万件以上の出願があり(日本で約16万2千件)、広く権利化が進んでいる。また権利行使の件数も刑事訴訟で毎年4千件程度の事件があり権利行使の実効性もある。さらに権利侵害だけではなく、第三者による商標権の先取り(冒認出願)も相当数存在するため、紛争予防の観点からもいち早く権利化を行っておく必要性が高い。

TNY Legal Co.,Ltd.
日本国弁護士・弁理士
永田貴久

京都工芸繊維大学物質工学科卒業。06年より弁理士として永田国際特許事務所を共同経営。その後、大阪のプログレ法律特許事務所のパートナー弁護士就任。16年にタイにてTNY Legal Co.,Ltd.を共同代表として設立。マレーシアのTNY Consulting(Malaysia) SDN.BHD.の共同代表も務める。

URL: http://www.tny-legal.com/
Contact: info@tny-legal.com

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