タイの取締役会に関する法律について

タイの取締役会に関する法律について

はじめに

在タイ専門家によるビジネス法務の解説第5回は、タイの取締役に関する法律について概説する。

1.タイにおける会社に関する法律

日本では、会社設立や組織、資金調達等を規定した「会社法」が存在するが、タイでは会社法という名前の法律は存在せず、民商法典の第22編が非公開会社について、公開株式会社法が公開会社について定めている。

これらが会社に関する基本的な法律である。以下では、取締役会の基本構造及び、電話又はTV会議での株主総会及び取締役会の開催方法について、簡単に説明する。

2.取締役会の基本構造

非公開会社については、取締役の人数は1人以上であればよく、また国籍要件や居住要件は設けられていない。取締役会の定足数は、原則として附属定款の定めにより、附属定款に定めがない場合で3人を超える取締役会の場合には3人の出席が必要とされている(民商法典第1160条)。

決議には、出席した取締役の過半数の賛成が必要であり、賛否同数となった場合には、議長が決裁権として追加の1票を投じることができる(同法第1161条)。取締役会決議が必要とされる事項は、法律上はない。しかし附属定款で取締役会決議事項を定めている場合にはそれに従い決議を行う必要がある。

公開会社については、取締役は5人以上であり、うち半数以上はタイ国内居住者である必要がある(公開株式会社法第67条)。取締役会の定足数は、全取締役の半数以上の出席とされている(同法第80条1項)。決議要件は、非公開会社と同様で出席取締役の過半数の賛成で、議長に決裁権がある(同法第80条3項)。

公開会社においても、取締役会決議が必要的とされている事項はなく、附属定款に定めがあればそれに従うこととなる。

なお、非公開会社および公開会社の取締役の選任は、いずれも普通決議事項となっているため、株主総会の開催が必要である。仮に取締役が辞任する場合には、いずれも株主総会決議は不要であり、DBDに届け出ることで登記の変更が可能である。

3.電話又はTV会議での開催における注意点

日系企業であれば電話又はTV会議を利用したいと考えることがより多いと思われるが、電話又はTV会議の開催は、限定された形式でのみ、有効な会議として認められている。
商務省の告示では、どの会議は対象か、明示していないが、株主総会及び取締役会も対象になると考える。

これによれば、まず少なくとも定足数の3分の1は実際に会議の開催場所にて出席する必要があり、さらに電話またはTV会議により出席する者も含め、全ての出席取締役がタイ国内にいることが必要となる。また情報技術・通信省が定める基準に従った電話又はテレビ会議の方法で実施する必要がある。このため、日本から会議に参加することは認められていない点には、注意が必要である。また、公開会社がこの形式での会議を行う場合は、その旨を付属定款に記載しなければならない。

TNY国際法律事務所
日本国弁護士  藤原 杯花

2017年1月よりタイ、TNY国際法律事務所にて執務。TNY国際法律事務所は、日本人弁護士2名が共同代表を務める法律事務所であり、会社設立から規制調査、契約書のリーガルチェック、商標登録申請などのサービスを提供している。
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Contact: info@tny-legal.com

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