BUSINESS IN THAILAND ビジネスインタイランド – 成功の秘訣は○○に! –

第5回 「株主・投資家目線」

タイ現地法人のMDの方々は本社への報告に日々追われているというお話をよく耳にしますが、その理由の一つに、本社が現地子会社の筆頭株主であることが挙げられます。本社からすると現地法人の資本金として投入した投資が、どれだけのリターンを生み出してくれるか気になるのは当然です。例えば会社の接待で使うお金は気にならなくても、自分のポケットからでるお金で食事をするときはメニューを吟味してしまうのと同じで、人間として自然なことです。

株主として知りたい情報は、売上の伸び率や今後の事業展開の方向性など多岐にわたりますが、現状で投資した会社がどのくらいの価値があるのかを示す一つの指標が、貸借対照表(B/S)の資本の部です。具体例として、タイ証券取引所(SET)に上場していて、皆さんもなじみのあるLCCのA社とN社の、2017年Q1の貸借対照表を比較してみましょう。

A社は資本金3に対し、資本の価値が約10倍の31となっており、堅調な事業を展開しているのがわかります。特に大事なのが留保利益で、簡単に言うと利益の蓄積です。留保利益が大きいほど、コンスタントに利益を出している証明で投資家にとって魅力のある会社と言えます。

一方、N社は株主が投資した資本金3.6に対し、資本の価値は-0.6となっています。損失を出し続け、資本金を食いつぶしてしまった結果がこれです。資本の部分がマイナスになっているということは、いわゆる債務超過の状態を示しており、自分の2本脚では立っていられず借入金が必要になります。実際に債務超過の解決策として、N社は増資を決定しました。

財務諸表のどこを見ればいいかわからないというご相談をよく受けますが、株主の目線では上記のように映っているはずです。また、現地MDを奮い立たせる手法として、現地法人の株を持たせる例があります。自分のポケットから出してもらうことで、事業に対する真剣さが大きく変わるという、先の食事の例と全く同じ心理です。

(第6回は12月号の掲載予定です)

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