ASEANビジネス法務 最新アップデート

CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)の解雇規制比較

CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)の解雇規制比較

3 カンボジア

今回はカンボジアにおける解雇規制について説明いたします。

⑴ 無期雇用契約の場合

 ア 解雇事由

無期雇用契約における解雇は、原則として、解雇のための「正当な理由」がある場合にのみ認められます。この点、労働法は「正当な理由」につき、労働者の適正・態度に関するまたは使用者の経営上の必要性に基づく「正当な理由」と定義しています。

「正当な理由」が認められるためには、日本と同様、最終手段である契約の終了、解雇を行わなければならないという程度の必要性が求められます。

労働法はその他の解雇事由として、労働者の重大な義務違反、不可抗力事由が挙げており、不可抗力事由には慢性的な疾病や収監がこれに含まれるとしています。

 イ 事前通知

無期雇用契約における解雇には、原則として、勤続期間に応じて最長3ヵ月間の事前通知が必要です。

もっとも、試用期間中の解雇、重大な義務違反、不可抗力事由(ただし、病気、身体障害のケースは除く)を理由とする場合には事前通知は不要とされています。

 ウ 解雇時に必要な支払い

解雇時に使用者が支払うべき可能性があるのは以下の項目です。

①未払給与
②未使用有給休暇に対する補償金
③解雇補償金
④損害賠償金

上記のうち、①及び②はいずれのケースにおいても支払われなければなりません。③及び④については以下のような場合分けが可能です。

まず、労働者に重大な義務違反が認められる場合には、③及び④の支払いは不要です。次に、解雇のための「正当な理由」が認められない場合(不当解雇の場合)には③及び④の支払い(または労働者の雇戻し)が必要になります。そして、それ以外の「正当な理由」が認められる場合については③のみの支払いが必要となります。

⑵ 有期労働契約の場合

 ア 解雇事由

他方、有期労働契約における解雇は、労働者の重大な義務違反、不可抗力事由があった場合にのみ可能であり、これらのケースにおいては事前通知は不要とされています。

 イ 解雇時に必要な支払い

解雇時に使用者が支払うべき可能性があるのは以下の項目です。

①未払給与
②未使用有給休暇に対する補償金
③退職金
④損害賠償金

上記の内、①及び②がいずれのケースにおいても支払われなければならないのは無期契約の場合と同様です。

その上で、労働者に重大な義務違反が認められる場合には、③及び④の支払いは不要です。不可抗力以外の事由に基づく解雇(不当解雇のケース)に当たっては③及び④の支払いが必要となり、不可抗力事由が認められる場合には③のみの支払いが必要となります。

One Asia Lawyers カンボジア事務所

弁護士 村上暢昭

日本国内での民事一般、国際企業法務対応経験をもとに、カンボジア進出戦略の策定、進出時のリーガルフォロー、 紛争発生時の対応等を日本・カンボジアの法律の差異を踏まえて執務にあたります。

著書に『メコン諸国の不動産法』『カンボジア労働法』
『カンボジ ア会社法』等

【One Asia Lawyers カンボジアオフィス】
2F, Phnom Penh Tower, #445, Monivong Blvd (St. 93/232),
Sangkat Boeung Pralit, Khan 7 Makara, Phnom Penh, Cambodia
Tel : +855(0)23-640-5621

gototop