【連載】但野和博のコンサルコラム サポート実録記“タイの経理現場より”

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ウイサー社編(4)「頭を悩ますスケジュール組み」

【前回迄のあらすじ】
~発給要件の運用が厳密化しているVISA/WP(ビザ/ワークパーミット)の申請代行業務。タイ人必要雇用者数の欠員、合弁先の受身な姿勢、VAT登記未了、挙句に借りている先のオーナーは本当のオーナーではないなど、不利な条件がオンパレードの中…

「すぐに賃貸契約をした時の日系代行業者に確認してもらい、オーナーからVAT登記のための承諾書をもらって下さい!」
これはまだ次なる衝撃の序章にすぎなかった。この時すでに、ビザ更新申請のための申請前日数も睨みながらのスケジュール組みにもなりつつあったのだ。(※1)
スケジュールから逆算して言うと、ビザ更新の申請が可能になるのはビザ期限の約1ヵ月前からで、それまでにWPを取得していることが鶏と卵の関係さながらに前提となる。そのWP取得の条件として、最初の入国時のNon B-VISA取得が必要となっている。
WP取得期間は申請から1週間程度だが、この物語の前半にもあったとおり、3ヵ月分の雇用に関わる月次申告書の申請実績が必要なため、ビザ取得後、最初のこの90日間が要件を満たすための期間とも重なってくる。
さらに状況を複雑にしている要因もあった。
取得したWPの受取時とビザの申請時は本人が同行する必要があることだ。ビザの受取時には通常“リエントリー”と言われる、ビザ期限内の出入国時に取得したビザが無効とならないための申請および取得をビザ取得後、同時にその足ですることが便利である。リエントリーの取得に関しても原則本人同行が必要なので、合計3回、労働局と入国管理局に出向く必要があるのだ。(※2)
そういうわけで、頻繁に日本に行き来をする駐在員にとっては、この要件の間のスケジュール組みが結構面倒だったりする。例え本人が出向かない場合もパスポートを代行者に預けるのだから、結局指定日にタイ国外へは出られないこととなる。
そんなスケジュール組みに暗雲が垂れ込み始めた頃に、更なる衝撃が立て続けに襲うこととなる…。
(次回に続く)
※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の
変更等、脚色部分があります。

(※1)
通常のVISA/WP取得スケジュールと流れは次のようになる。
1.タイ国外(日本やシンガポールなど)で90日のNon B-VISAを取得
2.WPを取得(3ヵ月分の月次税務申告書類等、VAT登記証等必要)
3.入国時に取得したビザの更新(WP同様の書類だが税務申告書類等に各申告書提出先
役所のオフィサーによる署名が必要)
至極簡単に言うとこの3ステップなのだが、ここでの準備書類の厳格さとスケジュール組みがなかなか骨が折れる。特に取得対象者である本人が上記期間中にタイ国外へ出国する場合などは注意が必要だ。また、申請後定められた日に受領する必要もさることながら、書類の申請に不備があった場合などの有事の対応には本人のみならず、場合によっては会社の申請書類に署名する署名権者などのスケジュール組みも必要となる。
(※2)
原則があれば例外もあり、ビザ取得を専門としている代行会社などでは、リエントリーについては本人出頭不要、場合によってはビザ取得時の申請時においても本人出頭不要で対応できるところもあるようだ。このあたりは長年のノウハウもさることながら、関係各所とのルートなど、代行専門会社ならではのものがあるのだろう。
もっとも、最近は取得に相応の確度がない事情を抱えたビザ取得など、はじめからある程度のリスクが予見される場合は、専門会社とはいえ、全て何でも受けているわけではないようだ。申請する会社側にとっては取得できて当然の認識ではあるが、条件によっては必ずしも取得できることを保証できるわけではないのが大きな理由だろう。

 

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Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke),
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電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、
顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表 : 日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadan
http://aporter.co.th/

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但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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