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第12回 ミャンマーの会社法

第12回 ミャンマーの会社法

堤 雄史(つつみ ゆうじ)
TNY国際法律事務所共同代表弁護士

東京大学法科大学院卒。2012年よりミャンマーに駐在し、駐在期間が最も長い弁護士である。SAGA国際法律事務所(www.sagaasialaw.com)代表であり、2016年2月よりタイにTNY国際法律事務所(www.tny-legal.com)を設立した。タイ法及びミャンマー法関連の法律業務(契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。

問い合わせ先:yujit@tny-legal.com

はじめに

ミャンマーの会社法(The Companies Act, 1914)(以下 「旧会社法」)を大きく改正する新会社法が2017年12月6日に成立した。旧会社法は287条で構成されていたが、新会社法は476条で構成されており、約200条増設された。新会社法はオー ストラリア会社法を参考に作成されており、約100年ぶりの改正となることから、多くの点で改正が行われている。

したがって、本稿においては新会社法のうち特に重要な改正事項についてのみ解説する。

外国会社の定義

新会社法においては、外国会社の定義が変更される。旧会社法上は、1株でも外国人または外国会社(以下「外国人」)が株式を保有している会社は外国会社として取り扱われる。また、ミャンマー会社の取締役に外国人が就任することは実務上認められていない。

しかし、新会社法においては、外国会社とは、海外企業、外国人またはその両者によって直接的若しくは間接的に所有若しくは支配され、持分比率が35%超のミャンマーに設立された会社と定義されている。これまでの新会社法の草案においては具体的比率については明記されていなかったが、新会社法においては明記されている。

ミャンマーの会社法が大きく改正
施行は2018年8月1日を予定

当該外国会社の定義変更により、ミャンマー会社でなければ取得できない事業ライセンスや不動産の長期利用権等を外国資本が一部入った会社であっても認められることとなる。

厳密には、法律上はこれらの規制は他の法律によるものであるため、他の法律の改正も必要であるが、過去のDICA局長の発言によれば、運用上会社法の定義変更に合わせて変更することが考えられる。

株主及び取締役の人数

新会社法においては、株主1名のみであっても会社を設立でき、100%子会社も設立できるようになる。取締役については、公開会社を除き、1名の取締役で足りるようになったものの、少なくとも1名は居住取締役である必要がある。

居住の定義は、12ヵ月のうち183日以上ミャンマーに居住していることであり、計算開始時期は既存の会社の場合には新会社法の開始日から、新会社法に基づき設立された会社の場合には登記日より計算する。

資本関連に関する変更

新会社法においては、額面額及び授権資本制度が廃止されることとなった。また、種類株の発行について明確に規定された。これにより、柔軟な資本政策を実施できるものと解される。

結語

上記以外にも、定款の名称の変更、小規模会社及び海外法人の概念の創設など多くの重要事項について改正がなされた。これまでは、旧会社法は古い法律であることから実務との乖離も多く、事実上死文化している条文もあり、旧会社法の一部を遵守していない会社も存在した。

新会社法の施行は2018年8月1日を予定されており、施行後も12ヵ月間の移行期間が設けられており、既存の会社は遅くとも移行期間終了までに新会社法に基づく体制に変更する必要があるため、早期に新会社法の改正内容及び必要な対応を確認する必要がある。
また、今後新規にミャンマーに進出する会社は新会社法に基づき機関設計を行う必要がある。

新会社法施行直後は設立関連書類の雛形の変更などにより混乱も予想され、既に進出を決めている会社においては新会社法施行前に旧会社法に基づく申請を行う方が円滑に手続きが進む可能性もあると解される。

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