法務・会計・税務 2018.07月号

第14回 ミャンマーの新最低賃金

第14回 ミャンマーの新最低賃金

堤 雄史(つつみ ゆうじ)
TNY国際法律事務所共同代表弁護士

東京大学法科大学院卒。2012年よりミャンマーに駐在し、駐在期間が最も長い弁護士である。SAGA国際法律事務所(www.sagaasialaw.com)代表であり、2016年2月よりタイにTNY国際法律事務所(www.tny-legal.com)を設立した。タイ法及びミャンマー法関連の法律業務(契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。

問い合わせ先:yujit@tny-legal.com

はじめに

2018年5月14日に国家委員会が最低賃金決定に関する通知(国家委員会2018年第2号通知)を発布した。これにより、当該通知日より1日8時間で4,800チャット、1時間で600チャットという最低賃金が直ちに有効となった。従来は、2015年8月28日に国家委員会より日給3,600チャットとし、2015年9月1日より適用される旨の通知により3,600チャットが有効であったが、約33%上昇した。

そこで、以下、新最低賃金の決定過程及び根拠法である最低賃金法の概要について説明する。

新最低賃金の決定過程

古い最低賃金法(The Minimum Wages Act, 1949)を改正する形で、新たな最低賃金法が2013年3月22日に成立し、同年6月4日に施行された。同法の施行細則は2013年7月12日に成立した。本法は具体的な最低賃金額は定めておらず、最低賃金額の決定方法のみ規定している。具体的な最低賃金額については、上述のとおり、2015年8月28日に日給3,600チャットとする旨の発表がなされていた。

法律上は、最低賃金について2年に1回見直しを行う旨が規定されている。

最低賃金法は、家族事業における家族、
政府や地方政府の公務員、船員、
そして10名以下の労働者の
小規模事業は適用されない。

当該規定に従い国家委員会は2018年1月2日、最低賃金案に関する通知(国家委員会2018年第1号通知)を発布した。概要としては、地域及び職種を問わず、全国一律で、1日8時間で4,800チャット、1時間で600チャットという最低賃金を提案している。

この規制は10名以下の労働者の小規模事業や家族事業には適用されない。当該最低賃金案につき、60日間の異議申立て期間が設けられ、4,092件の異議が労働者側及び使用者側双方から申し立てられた。しかし、国家委員会は2018年3月5日付で全ての異議を却下した。

その後、政府の承認を得られれば直ちに新たな最低賃金額が有効となる予定であったが、3月下旬に大統領の交代があり、4月は水祭りによる長期間の祝日などがあり、政府の承認が遅れていた。しかしようやく、2018年5月14日に新最低賃金が上述のとおり確定し、直ちに施行された。

適用対象及び例外

最低賃金法はいかなる事業において働く労働者に対しても適用される。ただし、家族による事業における家族、政府または地方政府の公務員、船員は対象外である。また、10名以下の労働者の小規模事業にも適用されない。

また、最低賃金額未満の支払いでも認められる例外的場合として、試用期間以前の必要な技術研修の期間については、3ヵ月以内であれば、最低賃金額の50%を下回らない額を支払うことも認められる。また、試用期間中においては、3ヵ月以内であれば、最低賃金額の75%を下回らない額を支払うことも認められる。

罰則及び賃金の定義

最低賃金法に基づき定められた最低賃金を下回る賃金を使用者は支払ってはならない。当該最低賃金を支払わない使用者は、罰則として、1年以下の懲役または50万チャット以下の罰金、若しくはその両方が科せられる。そのため、「賃金」の定義が非常に重要となる。この点、基本給与に加え、時間外労働手当及び賞与が含まれる旨規定されている。他方、交通手当、住居手当、食事手当、医療手当、チップなどは含まれない。

5月14日以降は新たな最低賃金以下の金額を支払うことは違法になるため、すべての企業にとって留意が必要となる。

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