日刊工業新聞

グローバル 経営 適地生産適地販売 タカネ電機 ― 中国で自動化推進

ワイヤハーネス加工増強生産拠点、東南アに複数設置

タカネ電機は、複写機などに使われるワイヤハーネスの加工を主力とする。1993年に初の海外進出として、香港に現地法人を設立。現在は中国とタイに計3カ所、生産拠点を持つ。製品はキヤノンなど日系企業に納入する。海外進出から四半世紀近くが過ぎ、事業環境が大きく変わる中、加工の自動化に着手する一方、タイ以外の東南アジアへの進出も検討している。

タイで行われているワイヤハーネス加工

賃金上昇などで国内での労働集約型ビジネスが成り立ちにくくなっていた92年当時、簑原社長は賃金が安い海外での生産の可能性を探るため、単身でアジア5カ国を調査して回った。最終的に中国進出を決断したが「提案当初はリスクの高い海外に出る必要はないと役員、幹部全員が反対だった」と簑原社長は話す。
だが将来、加工に従事するパート社員の確保が難しくなることが予想された。そこで広東省東莞市に初の海外拠点を設立し、95年4月に操業を始めた。当初は香港の現地法人から材料を供給して加工を委託する「来料加工」を採用。この方式は、設備を持たずに少ないリスクで加工できるのが利点だった。その後、行政指導に応じて15年4月に独資化した「高嶺電子(東莞)有限公司」として再スタートした。

01年11月には江蘇省蘇州市に中国第2の生産拠点として「高嶺電子(蘇州)有限公司」を設けたが、その道のりは独特だ。顧客が入居する工業団地の「近隣の村と交渉し、有利な条件で工場を建てた」と簑原社長。また、顧客である日系企業の工場から車で30分以内の場所にこだわった。この二つの条件が海外製造拠点を設ける際の同社の基準になった。
進出当時に比べ、中国の事業環境は激変し、かつての日本と同様に賃金上昇や従業員確保が難しくなってきた。このため、11年に移転した蘇州市の製造拠点には省力化対応と生産性の向上を目指し、ワイヤハーネス加工の自動化ラインを導入した。
中国人の現地社員が考案した導入コストを抑えたロボットで、電線やケーブルを束ねる束線バンドの位置決めをカメラで行い、加工する。従来は1ラインに7人が必要だったが、新ラインは1人で済む。また以前は手作業のため大変な労力が必要で、部品の付け忘れもあった。導入後は「改善提案も多く、現場のやる気につながっている」(簑原社長)。現在は9台が稼働しており、今後も増やす方針だ。

タイ・プラチンブリ県の「タカネエレクトロニクス(タイランド)」は14年4月に操業を開始した。「チャイナプラスワン」の製造拠点として位置づけられ、操業3年目で利益が出るようになった。今後はタイを自動化や最終検査を担当するハブ拠点とし、人手が必要な工程を人材が豊富なラオスやミャンマーなど近隣国でも行う考えだ。
まず、年内にラオスで事業パートナーを選定する方針で「人を集めてもらい、当社が技術的な支援を行う」と簑原社長は語る。年内にはさらにフィリピン、18年末までにはベトナムへの進出を目指す。自社が定めるタイを核とした「東南アジアサテライト工場構想」を進め、事業拡大と同時に東南アジア各国での雇用創出にも貢献する。

※記事提供・日刊工業新聞(渡部敦 2017/4/12)

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