日刊工業新聞

グローバル 経営 適地生産適地販売 北陸精機―ミャンマーに小水力発電機

地産地消を構築/電力不足解消、雇用創出に貢献

農業用水などを利用して発電する小水力発電機の製造販売事業を展開する北陸精機(富山県魚津市、谷口直樹社長)が、ミャンマーでの地産地消の仕組みづくりに乗り出す。製造方法を指導して、現地工場で発電機をつくれる体制を整える。農村部の電力網が未整備なミャンマーに対し、小水力発電機の事業を現地に興して、電力不足の解消と雇用確保に貢献する考えだ。

ミャンマーに設置した小水力発電機

ミャンマーのマンダレー管区に位置する、ミャウンジーボウン村とプエロンジョー村のそれぞれの用水路に設置した北陸精機製の小水力発電機「パワーアルキメデス」が6月末に稼働を始めた。最大出力7.5キロワットのこれらの発電機は、水路を流れる農業用水の力で得た電気を「パワーキオスク」という配電・充電の拠点に送る。ここで地域の僧院や小学校に配電するほか、充電したバッテリーを使って家庭の電力をまかなう。

搬送装置や除雪機などの製造を手がけている同社は、蓄積してきたスクリュー製造のノウハウを、水車づくりに生かして開発したパワーアルキメデスを2010年に発売し、小水力発電機事業の展開を開始した。同装置は、スクリューのような形状の水車の羽根が水を効率よく羽根に当ててトルクに変換、低落差・低流量でも発電が可能。農業用水路などに置くだけの据え付けのしやすさから、農業関連を中心に売り先を拡大。日本国内ではこれまでに35台を販売済みだ。

今は国際協力機構(JICA)の事業を介して新興国にも市場を広げようとしている。14年にJICAの無償資金協力をもとにフィリピンのルソン島にパワーアルキメデス2台を設置。そして今回、JICAの「マイクロ水力発電技術の普及・実証事業」でミャンマーの農村に納入した2台が動き始めた。

この事業は無償資金協力だったフィリピンのケースより踏み込み、現地での小水力発電の普及を目的にする。設置した発電機は北陸精機の本社工場で生産したものだが、これをモデルとして「つくり方を教えて、現地で量産する体制にする」(谷口貞夫北陸精機会長)のが事業の終着点だ。
製造企業からロイヤルティーを得るか、現地企業と合弁会社を設立するかのいずれかの枠組みで運営し、ミャンマー内の工場で組み立てられるようにする。
電流制御装置など、現地で入手しづらいものを日本から送るほかは、部品も現地調達する。それに先だち、現地スタッフを北陸精機に招いて研修を実施するなどの準備を進め、来春に事業を開始する方針だ。

「電力がないということは、そこに雇用の場がないということ。日本のモノづくりで働く場所をつくりたい」と谷口会長は意欲を燃やす。現地生産が軌道に乗れば、人件費と部品の安さの効果で、装置価格は日本製より3分の1程度に抑えられる見込み。将来は安価なミャンマー製の発電機の日本への逆輸入や、他国への輸出も視野に入れている。
※記事提供・日刊工業新聞(江刈内雅史 2017/9/13)

gototop