バンコク日経フォーラム2016 「アジアが注目されるチャンス」ソムキット副首相がインフラ整備、格差是正に言及

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日本経済新聞社、日経グループアジア本社、BOI(タイ投資委員会)は7月7日、バンコク日経フォーラム2016「アジア経済、新時代の幕開け―タイ、アジアの新しいビジネスハブ」を開催した。

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ソムキット・チャトゥシピタク副首相

基調講演したソムキット・チャトゥシピタク副首相は、「ブレグジット(英国のEU離脱)で欧州に懸念が広がりつつあるが、これはアジアが注目されるチャンスである」と述べたうえで、インフラ整備や高度技術化への投資優遇策の推進など、投資環境の改善に取り組む考えを示した。
ソムキット副首相は貧富格差の是正を推進していくことを表明し、農産品の付加価値を上げ、地方への観光促進を進めるためにも「インフラ整備が重要となる」と話した。タイは農業人口の割合が高い一方、生産性が低いという課題がある。政府は5カ年での大規模なインフラ整備のプロジェクトを進めており、高速鉄道やレムチャバン港、ウタパオ商業空港などの整備が計画に含まれている。
また、デジタルインフラ分野についても言及し、タイがデジタルハブとしての役割を担うべく、整備に注力していくことを強調した。

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ソニーが見るタイ、SCGが見る日本

続いて登壇したソニー株式会社の今村昌志執行役・EVPは、タイでの事業について付加価値の高いデジタル一眼レフカメラやスマートフォン、イメージセンサー、自動車向けカメラ、オーディオなど、多くの製品を生産しており、同社全事業売上の7割を占めるエレクトロニクス事業の生産戦略において「重要な拠点である」と紹介。タイを中心にタイ+1のサプライチェーン再構築プランや、研究開発の拠点として検討していることについても言及した。
タイ大手財閥であるサイアム・セメント・グループ(SCG)のガン・トラクンフン取締役は、「30年以上にわたりさまざまな日系企業とパートナーシップを結んでいるが、あえて課題を言うならば、日系企業は100%でなければ動かず、『意思決定が遅い』という点。私は60~70%程度決まればスタートを切り、あとは将来調整すればいいと思っている」と述べ、日系企業にスピーディーな経営を求めた。
そのほか、アビームコンサルティング(タイランド)の原市郎マネージング・ダイレクター、BOIのヒランヤ・スチナイ長官が講演した。

タイだからこそできる“ものづくり”を

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パネルディスカッションの様子

後半は「アジア経済、新時代の幕開け ―タイ、アジアの新しいビジネスハブ」をテーマに、デンソー・インターナショナル・アジアの末松正夫COO&EVP、花王の齋藤幸三常務執行役員・コンシューマープロダクツ国際事業統括部門統括、タイ国三井物産の佐藤真吾社長をパネリストに迎えた討論が繰り広げられた。モデレーターは日本経済新聞社の井口哲也アジア編集総局長。
末松氏は、「タイには難しい製品を作る技術力がある。タイで新たな製品を生み出し、世界に輸出していくことは可能だと思う。例えば、PPT(タイ石油公社)が行っているバイオ燃料開発などを自動車メーカーと共同で行うことで、インドネシアやマレーシアでは作れないものができるのではないか」と期待を表した。
また、佐藤氏は鉄道整備が遅れていると指摘し、タイ国内および周辺国へのロジスティクス面の改善が重要だと述べた。同様に、齋藤氏はダウェー開発が完了すればバンコクを中心にした世界戦略を展開することが可能になるとコメント。末松氏は原産地証明の自己証明制度や通関電子化など、非関税障壁における課題について、「バリアがあるとスムーズに市場が回らない」と付け加えた。

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