【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

【連載】半歩先読み、タイ自動車市場 ~タイ自動車ユーザの実態と展望~ 第10回(後編)

第10回 部品購入チャネルの量販店シフトの流れは強い(後編)

NRIは、ディーラ保証期間が終了していて、かつ自らアフターパーツを購入しているユーザを対象に、アフター部品の購買行動を調査した。具体的には、バンコクおよび地方都市ウボンラーチャターニー(以下、ウボン)で対面式の簡易アンケートを実施した。
本稿では、タイにおいて、ユーザがアフター部品を購入する際のチャネルの変化と、購入チャネルの意思決定基準について考察する。

アフター部品購入チャネルの意思決定基準

本連載第10回(前編)では、購入チャネルとして量販店が選択される傾向が強まっていることを示した。その理由として、量販店がタイのユーザニーズに対応できていることが挙げられる。
タイのユーザは、部品購入チャネルを選択する際に、交換サービス品質・製品品質など、量販店の特徴に合致する項目を重視する傾向がある(図表)。

これらは、バンコクと地方都市で共通して重視されている項目である。さらに、バンコクでは在庫数、地方では製品種数や部品交換サービスの早さが重視されている。また、部品別に見ると、タイヤは高価格ゆえ、他の部品よりも価格の安さ・プロモーション(値引き)が重視される傾向がある。この点について、多くの量販店は適用条件が異なるが、「金利0% 10ヶ月分割払い」といったキャンペーンを適宜実施している。

量販店を利用しないユーザ(ディーラや一般部品店、一般修理店の利用者)は、現在の量販店に対して「部品交換サービスの質」「製品価格」「家からの距離」に不満を持っている。しかし、「家からの距離」は量販店が積極出店を続ければ改善され、また「部品交換サービスの質」は業務オペレーションの標準化・高度化が進めば改善されうる。ゆえに、今後より一層量販店比率が上昇していくと考えられる。アフター部品を扱う日系企業は、量販店の出店状況や提供サービスの変化を注視し、商流変化を掴んで販売戦略を構築・実行する必要があるといえる。
次回は、タイ政府が注力しているEV産業に関して考察する。

(次回、ArayZ7月号に続く)


執筆者:野村総合研究所タイ
主任コンサルタント
吉村英亮


リサーチアソシエイト
Puncharat Hiransuchalert (Ming)

《業務内容》経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、 情報システム(IT)コンサルティング、産業向け IT システム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション
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