【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

【連載】半歩先読み、タイ自動車市場 ~タイ自動車ユーザの実態と展望~ 第8回(後編)

第8回 タイの自動車輸出・生産の見通し(後編)

ピックアップ、乗用車等のセグメント別輸出動向を踏まえて、輸出の将来見通しを試む本稿、前編(ArayZ2月号)の続き。

エコカーが乗用車輸出を牽引

2010年以降にタイに新規の乗用車工場を立ち上げた三菱とスズキは、タイを乗用車の輸出拠点として位置づけ、域外への輸出に積極的である。例えば、三菱はメキシコを含む北米向けに月5,000〜6,000台輸出している。スズキも周辺ではインドとインドネシアに生産拠点をもつが、タイ拠点の完成車の品質が最も安定しているという背景もあり、タイから欧州を含む域内外市場にエコカーを4万台近く輸出している。米国市場が昨年過去最高を記録し、欧州市場も回復傾向にあり、域外向け輸出は今後も安定的に伸びることが期待される。

また、数量は小さいものの、今後輸出拡大が期待されるセグメント伸びるのは、タイでPPV(Passenger Pickup Vehicle)と称されるピックアップ派生車だ。
PPVは、2004年にトヨタがピックアップをベースに開発したSUVモデルの「フォーチュナー」以来登場した製品である。世界的なSUVブームに乗って、PPVの輸出はフィリピン等周辺国を中心に好調であり、2015年に8万台を超えた。今後は、主なPPV生産メーカーであるトヨタ、三菱、いすゞに加えて、フォード等の他メーカーも輸出に力を入れることで、PPVの輸出は拡大する見通しだ。

今後のタイ自動車輸出の見通し

ここで、セグメント別輸出傾向をまとめると、最大の輸出セグメントであるピックアップの輸出は、資源価格の低迷が中近東市場に与えるマイナス効果に加え、主要モデルの新車効果の一巡により下振れリスクがある。その一方で、乗用車は域内外向けの輸出が牽引する形で拡大傾向が続き、PPVは世界的なSUVブームから周辺国向けを中心に高い伸びが期待できる。以上から、2017年の輸出は前年から横這いの120万台前後に留まるが、80万台を超える国内生産と合わせると200万台程度に回復することが予想される。

次稿では、アセアン、豪州、サウジアラビア等タイの主要な輸出市場の動向を分析する。
(次回、ArayZ4月号に続く)


執筆者:野村総合研究所タイ
シニアコンサルタント
山本 肇


上席コンサルタント
岡崎啓一

《業務内容》経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション
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