【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

【連載】半歩先読み、タイ自動車市場 ~タイ自動車ユーザの実態と展望~

第12回 タイの電気自動車(EV)市場の課題(中編)

タイ政府はハイブリッド(HEV)を含めた電動自動車(xEV)関連の税率を引き下げ、電動自動車の普及を図る方針を明確にしている。しかし、タイ市場では日系が先行投入したハイブリッド車が苦戦していることからも、電気自動車(EV)の発展には多くの課題が予想される。本節では、電気自動車の市場の普及の見通し、及び課題について述べる。

世界のxEV市場

世界のハイブリッドも含む電動自動車(xEV)市場は、2016年に220万台に達した。特に、プラグインハイブリッド(PHEV)と電気自動車(EV)はそれぞれ約100%増、約50%増と伸びているの対して、日系メーカーの独壇場であるハイブリッドは伸び悩んでいる。地域別にみると、中国が最大の市場であり、補助金の対象車種であるPHEV/EVは28万台に到達。それに続くのが、ディーゼル排ガス不正問題をきっかけにEVシフトを鮮明にした欧州が16万台に急増し、北米の13万台を追い抜いて2位に浮上した。他方で、日本はHEVが100万台で安定し、PHEV/EVは2万台と低迷している。以上からいえることは、国・地域によって、電気自動車の普及のパターン、スピードに顕著な差がみられることである。

国・地域間のEVの普及パターンを分けるのは、Co2規制、EV奨励政策(内燃機関等との差別化)である。中国のように、大気汚染が深刻化している国では、Co2規制を将来的には欧米並みに強化と同時に、国内自動車メーカーに対して2018年からゼロエミッションカー(ZEV)の生産を一定の割合で義務化する。
中国は将来的に充電池や電気自動車での覇権を握る思惑から、新エネルギー車(PHEV/EV)購入に対して補助金を与えて、EV普及を強力に推進する。これに対して、日本は電動化の有無に関わらず、燃費改善に貢献した車に対して、エコカー減税を与えていることから、結果的にHEVが最も有利になっている。
他方タイは、xEV市場規模は数千台にも達しておらず、次稿でみるように、今のところ日本型のハイブリッド、中国・欧州型のEVのいずれの方向にも進んでないようにみえる。
(次回、ArayZ10月号に続く)


執筆者:野村総合研究所タイ
マネージング・ダイレクター
岡崎啓一


シニアコンサルタント
山本 肇


《業務内容》 経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション
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