第4回サシンビジネスマッチングセミナー2014 「メコン地域との価値共創」をテーマに開催

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チュラロンコン大学サシン経営管理大学院の附属機関として日系企業向けに調査およびコンサルティング、経営幹部研修などを提供するサシン日本センターは、9月2〜3日、阪南大学中小企業ベンチャー支援センター、中小企業家同友会との共催で4回目となる「サシンビジネスマッチングセミナー2014」を開催。日本から31、タイからは40を超える企業・団体が参加した。
同センターは、今後、世界経済の成長を牽引すると予想される新興国市場、その中でも新興アジアと呼ばれる国や地域の重要性がますます高まっていく一方で、長期的に日本国内市場の縮小が予想される今、新興アジアにおける「市場獲得型戦略の構築」と「現地で〝売り抜く〞戦術の実行」が求められてくると予測。〝メコン地域との価値共創〞をテーマに、メコン地域で売り抜くために必要となるアプローチについての理解を深めるための「ナレッジシェアリング(基調講演&パネルディスカッション)」と、ビジネスマッチングを通じた日タイの異業種間の繋がりの強化を目的とした「ネットワーキング(日タイ中小企業交流セッション&ビジネスマッチング)」を2日間に渡り行った。

初日の特別講演第一部では、マンダムコーポレーション(タイランド)の松田哲明社長とハウスオソサファフーズ(ハウス食品)の谷原望会長が「トップ経営者に聞く、メコンで売り抜く企業戦略」をテーマに。第二部では、オフィスムラモトの村元弘和社長(元METCO社長)と神姫バスの三木公仁事業戦略課長が「経験者に聞く、タイビジネスの要諦」をテーマに、それぞれ講演を行った。モデレーターを務めたのは、サシン日本センターの藤岡資正所長。

現代女性をターゲットに据えたマンダムの戦略

マンダムはタイで20年以上、男性用化粧品「ギャツビー」を筆頭に、認知度が広く浸透し安定したシェアを獲得している。また、ベトナムやカンボジア、ミャンマーなどでも展開を拡大。松田氏は「今は女性のニッチ市場にフォーカスしています。特にメイクのクレンジング剤市場は勝てる市場だと考えています」と話す。日本では、女性洗顔料とクレンジング剤市場の比率はだいたい1対1。しかし、タイでは10対1ほどの差があり、しかも10が大きいということではなく、1が少ないのだという。「ですからこの市場には成長が期待できます。ターゲットとなるタイ人女性は18〜35歳。リサーチの結果、この層はキャリア思考で忙しいがある程度の収入もあり、健康、フィットネス、食品へのこだわりも高いことが分かり、ウォーター・クレンジングの〝ビフェスタ〞という商品を投入しました。
日本でも展開している商品ですが、サイズなどタイ向けにアレンジしています。このターゲット層にアプローチをする方法には、店頭での展開や屋外外広告、BTS・MRTの鉄道広告、サンプル配布のほか、フェイスブックを活用しています。フェイスブックはユーザー数の多いタイでは有力な宣伝ツールで、同商品のページでは7万7000人を超える〝いいね!〞をいただいています。また、有名ブロガーと協同して、実際に使った感想などをブログ上にあげてもらうなどの方法で、クレンジング剤のシェアでトップを獲得しました」。タイでの事業展開について松田氏は、①日本との共通点・相違点を知る②市場の変化を感じる(数年先を見据える)③タイ市場に向けた製品やサイズ④コミニュケーション活動は現地主導⑤生活者の声を謙虚に聞く(聞き取り)⑥地道な活動を繰り返す―がポイントとまとめた。

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マンダムコーポレーション(タイランド) 松田哲明社長

 

現地のニーズを把握しスピードを持った意思決定を

ハウスの中核事業は、カレーなどの商品を扱うハウス食品と、ビタミンやドリンクを扱うハウスウェルネスフーズである。タイでは2011年にハウスオソサファフーズを設立、業務用や給食などへカレーを供給する事業と、健康ドリンク関連事業を展開している。谷原氏は「タイではレモン6個分のビタミンCを手軽においしく摂ってもらえるヘルシードリンク〝C-vitt〞が、高い認知度を獲得しています。初めはオレンジ味とレモン味の2フレーバーで展開していましたが、タイ人スタッフのアイデアでザクロ味の販売を始めました。中華系タイ人にとってザクロジュースは定番の飲み物だそうで、これはタイ人でなければ分からないことだったと思います。現地の本当のニーズを把握することの重要さを知るきっかけとなりました」と話した。また、日系企業は高所得層をターゲットに置く傾向があるとし、「ニッチ市場で量より質が求められるのが日本型ですが、オーバースペックを解消した薄利多売を目指すべきなのがアジア型です。
そのためには海外で経験を積み、現地化と意思決定のスピードが鍵になる」と述べた。
自社の得意分野、技術にこだわり、現地の食文化とライフスタイルの理解が重要だと締
め括った。

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ハウスオソサファフーズ(ハウス食品) 谷原望会長

 

現地スタッフとの相互理解が成功の秘訣

元METCO社長の村元氏は、タイ進出時のエピソードとタイでの事業を行う上でのポイントについて講演。METCOの日本本社である村元工作所は、もともと関西の家電メーカーとメインに取引していた神戸の町工場だった。
1985年のプラザ合意を機に、87年タイへ進出するも、会社設立時から数々の困難があったという。工業団地ではなく一般の用地に工場を設立したため、電気、水道、電話回線はすべて自社で引いた。また、部品を輸入して組み立てるのが主流だった当時のタイ製造業界において、原材料を輸入して製品を最初から作るという同社の業種は前例がなく、BOI(タイ投資委員会)の書類も対応していなかった。村元氏は「操業を開始してからも労働争議や違法ストライキなどに悩まされました」と当時を振り返り、長年の経験から、タイ人とのコミニュケーションの重要性を強調。慣習を理解し、タイ語で直に対話することで情報の吸い上げが可能となり、スムーズな事業展開に繋げられる。そして、慎重かつスピーディーな意思決定も重要であるとし、「タイで成功できなければ、ほかでも成功はできない」と話した。

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オフィスムラモト 村元弘和社長(元METCO社長)

神姫バスは、昨年12月にタイの大手旅行会社とMOU(覚書)を締結したばかり。三木氏はタイ進出の経緯や目的について説明した。
会場からは各講演者に対する質問が積極的に飛び交い、参加者のタイ進出にかける期待が伺われた。
2日間のセミナーを終え、参加者のシリコンメーカー男性は「当社は既にタイ進出を果たしているが、今回のセミナーを受けたことで自分が考えていたことが間違ってはいなかったと実感できた」と話し、また、機械工具関係の男性は「セミナーでの失敗と成功の話はためになった。タイの企業と話したが、まだタイに進出するかは決めかねている。ただ、日本の市場は縮小しており、タイには顧客も進出しているので真剣に考えたい」と、感想を述べた。

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神姫バス 三木公仁事業戦略課長

 

中小企業家同友会インタビュー

中小企業家同友会全国協議会(中同協)
池田泰秋 事務局次長

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中同協は日本全国4万3,500社の中小企業経営者が集まる団体で、各県に中小企業家同友会があり、定期的に例会を実施しています。例会では知識、経験の共有、成功や失敗などの情報交換などを行っているほか、経済活動の源泉として国への中小企業支援策などの政
策提言活動を、また、産・官・学・金(金融)の連携を高める活動をしています。昨今、中小企業の海外進出が増えていますが、日本から出てしまうと情報交換をする場がなかなか見つからないという声もあり、国際連携も視野に入れ試行錯誤しているところです。

大阪府中小企業家同友会
畑野吉雄 顧問

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阪南大学との連携をきっかけに、サシン日本センターの藤岡所長とご縁を持たせていただいており、今回はタイ現地の可能性を探りに来ました。タイへは既に進出している中小企業も多いのですが、まだまだ相互に情報交換などできていないのが現状です。海外進出にあたり相談窓口は必要不可欠で、政府機関やJETROなどにも意見を求めているところです。タイは急成長を安定的に続けており、地理的、経済的な魅力からも、あらためて今後の可能性を感じました。

 

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サシン日本センター
Sasa Patasala Building, Soi Chula 12,
Phyathai Road, Bangkok 10330
02-218-4001~9 Ext.157
www.sjc-net.biz

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