みずほ銀行との業務協力で、広がる可能性 SCB、タイ企業の対日本投資を促進

再生可能エネルギーの需要拡大に伴い、タイ証券取引所の上場企業であるGunkul Engineering Public Company Limited(以下、Gunkul)が日本での太陽光発電事業の展開に第一歩を踏み出した。
宮城県仙台市におけるGunkulの太陽光発電所の建設・操業に、総額約118億円のプロジェクトファイナンスによる融資契約を行ったのが、タイ国内大手の民間銀行であるThe Siam Commercial Bank Public Company Limited(以下、SCB)と2014年11月から業務協力を締結している、株式会社みずほ銀行だ。


Gunkul Engineering Public Company Limited
CEO ソパチャ・ダムロンピヤヴット氏

SET上場企業が日本国内で太陽光発電事業を行う理由

2016年9月、送配電線向け電気機器の製造、販売、再生可能エネルギーなどの発電所の開発・運営を行うGunkulのソパチャ・ダムロンピヤヴットCEOは、仙台大倉メガソーラー発電プラント建設にあたり、みずほ銀行と地方銀行8行の計9行からシンジケートローンにより約118億円(約41億バーツ)の資金調達を得たことを発表した(アレンジャーはみずほ銀行)。
ソパチャCEOは、プロジェクトファイナンスで調達した資金の85%が投資費用に充てられるものの、同社の負債資本倍率は1.5以下を維持、30億バーツのキャッシュを自己資金として確保しており、財務状況に影響はないことを強調。今回の融資契約が、再生可能エネルギー・インフラ投資事業に対する銀行やデベロッパーの関心につながればと期待を示した。
Gunkulが日本円で負債と収益を持つことは、同社の利ざや(利益率)がタイバーツの上昇や下落にさらされることを回避できることを意味する。

SCB×みずほ銀行による戦略的提携


2016年10月に開催されたみずほ銀行との締結式には、カンクン氏とSCB社長兼CEOのアーティット・ナンタウィッタヤー氏(右上)が出席した

みずほ銀行は、今回のケースが日本におけるタイ企業がスポンサーとなる大規模な太陽光発電事業のプロジェクトファイナンスとしては初になると発表している。
SCBのアーティット・ナンタウィッタヤー社長兼CEOは、「2014年11月にみずほ銀行と業務協力を締結して以来、私たちは日本企業のタイ進出、およびタイ企業の国外進出に対する支援で相互補完してきました。みずほ銀行は日本における高度な金融サービスを有し、ノウハウを提供しています。本プロジェクトでも当行の主要取引先であるGunkul社の海外電力インフラへの投資ニーズに応えるため、同社への貸出・決済・外国為替・ビジネスマッチングなどに関して、早期設計段階から協力関係を結んできました。私たちはこのほかにも多方面の金融サービス分野で連携しており、多くの実績を積み上げています」と話した。


Gunkul Engineering Public Company Limited
会長 カンクン・ダムロンピヤヴット氏

現在、Gunkulは日本で4つの太陽光発電事業に投資している。今回の仙台大倉メガソーラー発電プラント(宮城県仙台市)に加えて、最大出力38MWの君津メガソーラー発電プラント(千葉県君津市、2018年操業予定)、設備規模72.80MW、最大出力66.78MWで電力購入契約を結ぶケントスメガソーラー発電プラント(栃木県宇都宮市)、そして最も規模が大きいのが、313億2780万円(約107億7600万バーツ)相当となる最大出力75MWの岩国メガソーラー発電プラント(山口県岩国市)だ。日本における電力プラント事業は、国内外におけるGunkulのソーラー発電投資と運営の総ライセンス数を200MWに押し上げる。

仙台大倉メガソーラー発電プラントの事業計画によれば、2018年初めには31.75MWを出力開始予定で、発電所は20年にわたって東北電力に電力を販売、12%のROI(ReturnOn Investment)を見込んでいるという。日本での投資は、Gunkulの全額出資子会社であるGunkul International Mauritiousを通じて行われ、日本の支店オフィスも設立済みだ。

勢いを増すタイ企業の海外投資

ソパチャCEOは、「現在、タイと海外における収入の割合はおおよそ半々ですが、タイにおいてはさまざまな要因から再生可能エネルギーの成長が低く、また電力購入契約の数も少ないことから、当社としては海外事業を広げるべく動いています」と話し、さらなる海外投資に意欲を示している。

ソーラー発電や再生可能エネルギーの市場にポテンシャルが見られる国としては、日本に加えてラオス、マレーシア、ミャンマーが挙げられる。Gunkulはこの先5年で、少なくとも300億バーツ分の投資を行う計画をしており、ソパチャCEOは国内外での事業投資にかける財力に自信を見せる。自己資金に加え、さらなる投資のための財源を上げるため、同社の取締役会は前回の30億バーツ分に加えて、追加で30億バーツ相当の社債を発行する計画を承認済みだ。Gunkulはタイ国内外におけるソーラー、風力発電所のライセンス入札など、再生可能エネルギーに活動範囲を広げている。次の3年で、同社の収入の70%以上はこの事業が占めるようになるだろう。また、現在持つ336MWの電力購入契約を、2021年にはすべての電力源を再生可能エネルギーにして、1,000MWに増やすことを目標としているという。

「日本での事業はこの先20年以上、当社の利益創出を促し、財力を高める要因になると確信しています。海外展開は、当社が現地における主要な再生可能エネルギー創出企業となるための重要な戦略です」(ソパチャCEO)。
多くのタイ企業が海外におけるビジネス機会への注目度を上げており、日本は再生可能エネルギーのほかにも、テクノロジー、小売、ファッション、ホテル業界などの投資先として魅力的な市場と言える。
アーティット社長兼CEOは、SCBとみずほ銀行では日本からの対タイ投資も呼び込んでおり、新たな事業が実現する日は近いと付け加えた。「みずほ銀行との強力なパートナーシップにより、当行はタイと日本、どちらの企業に対しても最適な金融商品・サービス・サポートの提供を可能にしています」。

gototop