法務・会計・税務 2018.05月号

「Thailand 4.0」が目指すデジタル経済におけるデータの活用と保護

「Thailand 4.0」が目指す、
デジタル経済におけるデータの活用と保護

1.産業競争力強化の基盤となるデジタル経済において付加価値を創出するには、
どのようなビジネス・モデルが考えられるでしょうか?
2.新たなビジネス・モデルではデータの活用がキーとなりますが、忍び寄るサイバー攻撃から重要データを保護するにはどのようなアクションが必要でしょうか?

後藤恵美
Manager

2009年にPwCアドバイザリー株式会社 (現PwCコンサルティング合同会社)に入社、日本において電力会社の海外事業を連結決算早期化の面で支援する他、経済産業省をはじめとする政府機関の海外調査業務に従事。2016年1月にPwCコンサルティング・タイランドにジャパンデスク・マネージャーとして赴任。自動車業界を中心とするタイ国日本企業の業務プロセス改革の他、日本政府によるアセアン地域経済協力プロジェクトに参画している。米国公認会計士。

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1 新たなビジネス・モデルの源泉となるデータ活用

タイの国家戦略「Thailand 4.0」では、今後20年にわたる産業高度化の構想が示されています。タイ投資奨励委員会(BOI:Board of Investment)は、ターゲット産業として「次世代自動車」や 「スマートエレクトロニクス」など10産業を指定していますが、産業競争力強化の基盤としてタイ政府が実現を目指すのがデジタル経済です。

このような背景のもと、イノベーション主導型の産業育成へ向けたインフラ整備として、チャチェンサオ、チョンブリ、ラヨーン3県にまたがるタイ湾東部では「東部経済回廊 (EEC:Eastern Economic Corridor)」の開発が本格的に進んでいます。EECでは既に日本企業によるデジタル技術を活用した事業投資など、官民で様々な覚書(MOU:Memorandum of Understanding)が締結されています。

イノベーションによる付加価値を創出するデジタル技術としては、一般消費者に深く浸透しているモバイル・デバイスの他、モノのインターネット化(IoT:Internet of Things)、クラウド・コンピューティング、センサー類、ビックデータ分析、人工知能 (AI:Artificial Intelligence)など様々な技術が存在します。これらの技術を利用して取得する顧客情報の分析から、新しい嗜好を持つ顧客セグメントを発見したり、新事業を創出したりすることが可能となります。このような時代において、企業には競争優位を生むためデジタル技術によるビジネス戦略が求められています(図表1)。

デジタル経済において企業が競争優位を生むには、データの集積と分析により、既存の価値とは異なる新たな価値を創出することが不可欠となります。

タイに先んじて高齢化や人手不足、環境・エネルギー制約などの社会課題が深刻化する日本では、様々な業種、企業、人、データ、機械などをつなげ、人工知能等のデジタル技術を用いて新たな付加価値や製品・サービスを創出、生産性を向上する枠組みとして、2017年10月に「Connected Industries」東京イニシアティブ2017が策定、公表されています(図表2)。

2 忍び寄るサイバー攻撃と高まるデータ保護要件

このように、デジタル経済においては社内外に存在するデータを活用した新たなビジネス・モデルが創出されていきます。利用されるデータの範囲は、顧客情報やサプライヤー情報など自社で管理するデータのみならず、対象業種における他企業、ユーザー、ソーシャルメディアに関する情報など、外部のデータも含んだ膨大なデータとなります。

一方で、このような自社データやデータ共有業者から入手する外部データは大きなビジネス価値を持っているため、システムへの不正アクセスによるサイバー攻撃のリスクが高まっています。サイバー攻撃による被害を未然に防ぎ、データを適切に保護することは企業にとって最低限の社会的責任であるとともに、データのセキュリティー施策は企業のブランド価値向上の観点からも益々重要性を増しています。

しかしながら、全てのデータを厳密に管理することはコスト効率の観点からも不可能です。そこで、データを重要度により分類し、重要度に応じてデータの保護レベルを設定することが重要になります。

また、データには「作成」、「共有」、「加工」、「保管」、「破棄」といった一連のライフサイクルがあるため、企業はライフサイクルを通じたデータ保護の基本的なアクションを策定し、モニタリングを行う必要があります(図表3)。

PricewaterhouseCoopers
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