法務・会計・税務 2019.01月号

不正が与える企業への影響と早期発見への糸口

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~不正が与える企業への影響と早期発見への糸口~

1.不正の発生は企業にどのような影響を与えるのでしょうか。
2.不正の発見にはどのような手段が有効なのでしょうか。

吉川 英一
Senior Manager

2013年にPwCアドバイザリー株式会社 (現PwCアドバイザリー合同会社)に入社。会計不正調査、海外腐敗行為防止法(FCPA)調査を含むフォレンジック領域において10年以上の経験を有する。2015年1月よりPwCタイに赴任し、東南アジアにおける日本人不正専門家の第一人者として、製造業、金融機関と多業種に亘りに、不正調査、不正検出データ分析、不正リスク管理体制の構築、サイバーセキュリティー業務を指揮している。米国公認会計士。日本証券アナリスト協会検定会員。公認不正検査士。

++66 (0)2 844 1249(直通)++66 (0)61 413 0774(携帯)
eiichi.yoshikawa@th.pwc.com

 

前回11月号では、PwCが隔年で発表している「世界経済犯罪実態調査」2018年度タイ版(以下、「本調査」)の結果に基づき、タイにおける不正の実態・傾向についてご説明しました。今回は、引き続き同調査結果を用い、不正が与える企業への影響および不正の主な発覚経路についてご説明いたします。

尚、我々が定義する経済犯罪には、従業員による資産の横領といった不正行為に加え、贈収賄、不正競争、マネーロンダリング等の法令違反やサイバー犯罪等を含みますが、本稿では便宜上まとめて「不正」と呼ぶことにします。

不正は金銭的側面のみならず、風評や従業員のモラルに影響を及ぼす

前稿にて、過去2年間に不正を経験したと答えた回答者は、前回調査から倍増である全体の48%(248名)に上り、約二人に一人が社内で何らかの不正を経験したという現状をご説明いたしました。その内容を金額ベースで見ると、約4分の1となる23%が10万USドル以上、その内約半数は1百万ドル以上の被害を受けており、不正による財務的被害の甚大さが見て取れます。

その内容は、資産の横領や架空・水増し発注によるキックバックの受領など従業員の私利私欲による直接被害もあれば、法規制・コンプライアンス違反による罰金・課徴金等、様々です。そして、多くの場合において、ほんの出来心で始まった小さな不正行為が、長年に亘り見過ごされてきたことによってその規模を増し、結果的に企業へ多大な財務的損害を与えているのです。


出処:PwC世界経済犯罪実態調査2018

また、不正による影響は必ずしも金銭的な被害のみとは限りません。不正は①従業員の士気・モラルの低下、企業の評判やブランド被害、さらには、②規制当局や取引先との関係性の悪化等、多くの非財務的な副次的影響も及ぼします。

例えば、企業が、不正に気づかない、黙認する、または不正を働いた従業員への適切な対処を行わない等と対応を怠った場合、不正を行っても問題ないという意識が増幅し、企業の風土が大幅に損なわれことになります。結果、不正行為は蔓延するとともに、倫理観の高い従業員からは不満が高まり、優秀な人材の流出さえ招きかねません。

また、規制への遵守意識が低く、適切なコンプライアンス体制を構築していなかった事により規制当局から目をつけられたり、欧米企業など適切なコンプライアンス体制の構築を契約条件として取り入れている取引先との取引停止など事業活動への影響も無視できません。

従って、今まで企業の深部に潜んでいた不正がこのタイミングで表面化してきているという事実は、今後の不正リスク対策を検討する上で非常に良い傾向だと言えるでしょう。


出処:PwC世界経済犯罪実態調査2018

従業員の認識向上により、内部通報による不正の発覚が加速している

それでは、タイ国内において、不正はどのように発覚したのかを見てみましょう。企業は不正の防止・発見のために、内部通報制度や不正リスク管理プログラムの導入など様々な手段を取っており、各施策が不正の発見に重要な役割を果たしております。本調査の結果、過去二年間に発生した不正の発覚経路として内部監査が18%と最も多くなっております。内部監査の広義の目的は、経営目標の効果的な達成のために業務プロセスや内部統制等の経営諸活動の遂行状況を評価することですが、その統制活動を精査する中で不正の兆候や証拠が見つかることも多くあり、不正リスクを勘案した効果的な内部監査の実施は、不正の防止・発見をする上で非常に有効な手段になります。

次いで内部告発が16%、内部通報ホットラインが12%と多くなっておりますが、注目すべきは、外部告発と合わせて、これら数字が2016年から大幅に増加していることです。本調査の回答者が昨年から倍増していることからも分かるように、確実に従業員や取引先の不正に対する認識が高まっており、その結果として、身の回りになる不正行為の自発的な報告が活発化したのだと推察できます。すなわち、有効的な通報制度を構築することによって、今まで経営陣の耳に入って来なかった情報を早期に捉えることが出来る土壌が出来てきたと言えるでしょう。

近年、不正リスク対策は、世界中の企業にとって重要な課題になっておりますが、タイ国内においては今がまさに、その第一次過渡期と言えます。次回は、不正リスクと対峙するために、今企業がとるべき対策の概要を解説します。


出処:PwC世界経済犯罪実態調査2018

PricewaterhouseCoopers
Legal & Tax Consultants Ltd.
15th Floor Bangkok City Tower, 179/74-80
South Sathorn Road, Bangkok 10120, Thailand
Tel: 0 2344 1000

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