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第9回 社会保障法の概要

第9回 社会保障法の概要

加入対象

2012年に制定された新たな社会保障法(The Social Security Law, 2012)は、2014年4月1日に施行され、同月2日には施行細則が制定されました。
同法においては、施設で5名以上の労働者を雇用している会社は、社会保障制度への加入が義務付けられました。強制加入の対象外業種は非営利組織等に限定されており、使用者の家族以外の労働者は、原則として社会保障制度の強制加入の対象となります。なお、日本と同様、強制加入義務のない業種の使用者及び労働者であっても、任意に社会保障制度に加入することは可能です。

5名以上の労働者雇用で社会保障制度に強制加入義務未加入の場合、加入指導事例も

社会保障料

社会保障に関する使用者及び労働者の社会保障料は右表のとおりで、いずれの負担率も対象労働者の月給に基づきます。但し、現在は月給の上限が30万チャットとして運用されているため、30万チャット以上の月給労働者は、一律30万チャットを基準に社会保障料が計算されます。

使用者は、労働者が負担する社会保障料を労働者の給与から控除し、使用者が負担する社会保障料とともに、社会保障事務所に対して支払わなければなりません。表のうち、2.から4.までについては2017年8月11日時点において、運用されていません。
支払期限について、使用者は当該月の終了後15日以内に負担を支払わなければなりません。支払を遅延した場合、使用者は、保障料の10%(継続して保障料を支払わなかった場合には、未払い保障料総額の10%)を制裁金として支払う必要があります。

使用者の義務

使用者は、社会保障料や給付金の支払記録を、規定に従って保管しなければなりません。また、使用者は規定に従い、①労働者の出勤記録、②新規雇用者、労働者の労務の変更、雇用の停止・退職・解雇、③報酬の増額及び支払、④労働者、支配人、代表者及びそれらの変更についての記録を正確に保管し、所定のタウンシップ社会保障事務所に提出します。当該届出は、いずれも各事由が生じた日から10日以内に行わなければなりません。

社会保障の内容

社会保障制度の内容としては、主に①健康社会医療制度、②障害給付、老齢退職年金、遺族年金保険制度、③失業保険制度、④労災保険が存在。なお、労災保険に加入している労働者は社会保障法のみ適用され、労働者災害補償法は適用されません。

実務上の留意点

近時、社会保障事務所が会社の事務所に突然立ち入り、社会保障に未加入の場合には加入するよう指導する事例も見られるようになりました。したがって、加入義務が生じた場合には速やかに社会保障の加入手続きを行う必要があります。


堤 雄史(つつみ ゆうじ)
TNY国際法律事務所共同代表弁護士
東京大学法科大学院卒。2012年よりミャンマーに駐在し、駐在期間が最も長い弁護士である。SAGA国際法律事務所(www.sagaasialaw.com)代表であり、2016年2月よりタイにTNY国際法律事務所(www.tny-legal.com)を設立した。タイ法及びミャンマー法関連の法律業務(契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。
問い合わせ先:yujit@tny-legal.com

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