ArayZオリジナル特集

タイの会計・税務 概観

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会計 Q.
タイの会計基準が変わる可能性があると聞いたことがあるのですが。

A.事実ですが、現状はいつになるかは不明です。

そもそも、現在のタイにおける会計基準は『TFRS(タイ財務報告基準)』と『TFRS for NPAEs(公的説明責任を有さない企業向けタイ財務報告基準)』の二種類があり、グローバルに用いられているIFRS(国際会計基準)のコンバージェンス版である『TFRS』に対し、日系企業を含む外国企業が主として採用する『TFRS for NPAEs』はタイ独自の会計基準であり、『TFRS』に比べて相対的に簡便な会計基準となっています。

この点、2017年にタイ国会計職業連盟(FAP:Federationof AccountingProfessions)は、『TFRS for NPAEs』に代わる会計基準として、『TFRS for SMEs』(中小企業向けTFRS)を2018年1月1日以降開始する会計年度から適用とする旨を発表しました。

このとき発表された『TFRS for SMEs』は、中小企業向け国際会計基準(IFRSfor SMEs)をコンバージェンスしたものであり、従来求められていなかった包括利益計算書・キャッシュフロー計算書の作成や、税効果会計の適用も数年にわたって段階的に適用することを企業側に求める内容になっていました。

他方、同年中にタイ国会計職業連盟はこの発表を取り下げ、その会計基準の適用時期や、その範囲について、タイ国の環境に即するように再度見直しを行う旨を発表しました。今のところ、これ以降のアップデートはなされていませんが、もし実際に会計基準が変われば、会計業務に大きな変更を及ぼす可能性がありますので、継続的に情報にキャッチアップすることが求められます。

会計 Q.
タイでは他の会社の財務情報を見ることができると聞いたのですが。

A.事実です。

タイでは商業登記局に登録された財務諸表データがデータベース化されており、一定の登録プロセスを経れば、オンラインで他社の過去の財務情報を閲覧することができます(http://datawarehouse.dbd.go.th/ bdw/home/login.html)。

開示されている財務情報には貸借対照表、損益計算書のサマリー版に加え、簡単な経営指標(総資産利益率等)も含まれており、更には、同業種別・規模別の財務数値の平均値なども調べることができます。また、更に詳細な情報が必要であれば、実際の財務諸表を入手することも可能になっています。

昨今のタイにおける事業環境は厳しさを増しており、経営においても無手勝流に取り組むのではなく、財務情報を分析し、行うべき最善の打ち手を実行していくことが重要になっていると思われます。この点、他社の情報を利用すれば、例えば以下のような分析が可能となります。

•競業他社の直近の売上・利益率を把握し、自社の数値と比較することで、自社の業績の業界内における相対的位置づけが把握できる。

•新規参入事業にすでに参入している他社の創業時からの資産規模・売上・利益率を把握することで、投資規模とその後の成長のスピード感のベンチマークを得ることができる。

•取引先の利益率や負債の状況を把握することで、事業の安定性を理解し、取引を開始、あるいは継続すべきかの意思決定を行うことができる。

ともすると、会計情報は『法律に迫られて作成するもの』になってしまいがちですが、このように実際の経営に活かすこともできますので、有効に活用したいものです。

会計 Q.
日本側では財務諸表の監査を受けていないこともあり、会計監査に不安を抱えています。どういった点に気をつけて監査を受ければ良いでしょうか。

A.ポイントは大きく3つあります。

①会計監査人の選定
タイにおいては公認会計士による監査が原則全ての事業体に求められていることから、金額もクオリティも高い会計監査人から、金額は安くクオリティも値段相応といった会計監査人まで幅広い会計監査人が存在します。

例えば『財務諸表の英語訳を作ってくれるか否か』『連絡への返信が早く、想定していた期日を遵守してくれるか』といったサービス面にも現れますので、御社の求めるものを、希望する価額で提供する会計監査人を選定することが重要です。

②論点になりやすい事項の事前協議
日本の中小企業の会計では通常求められない一方、タイの会計では求められることの多い会計処理が一定数存在します。具体例としては、

•仕掛品への間接費配賦(原材料から製品になる途中の物品に対して、費用がいくらかかっているかを計算し、賦課する必要がある)

•退職給付引当金の計上(退職者に支給する退職金相当額のうち、現在まで発生していると考えられる金額につき、引当金を計上する必要がある)

•リース資産計上(資産計上しなくて良いリース資産に関する金額基準がないため、条件に合致する場合は、全て資産計上する必要がある)

こういった論点に関しては監査に突入してから検出され、対応することになると非常に面倒なので、監査人と事前協議をし、問題となりそうな点は事前に検出・対応をしておくことが求められます。

③監査進捗のフォローアップ
監査を受けるにあたり、状況については会計担当者と共有しておき、何か会計担当者の方で対応が難しいことがあるようであれば、早めに日本人のマネジメントメンバーによりサポートを行いましょう。こうすることで、少なくとも監査の進捗が止まってしまい、監査がいつまでも決了しないという状況を防ぐことができます。

もし会計担当者が問題を抱えており、その内容が良くわからない場合は、会計監査人に直接確認したり、他の専門家に照会するなどし、早めに問題が何であるかの理解を行う事も重要です。

法人税 Q.
法人税を安くするコツはないでしょうか。

A.法人税計算上の費用を適切に計上するのが重要です。

タイの法人税も日本と同様、原則収入(益金)から費用(損金)を引いた差額である課税所得に対して税率をかけることで課されます。税率は基本的にはコントロールできないとすれば、税金を安くする方法は、法人税の計算上の『収入を少なくする』または『費用を大きくする』の方法しかありません。

この点、『収入(益金)を少なくする』ことは非常に難しいので、『費用(損金)を大きくする』ことが法人税を安くするためのコツになるわけですが、簡単に心掛けられ、かつ結果が出る点として以下の点を心がけるのが良いのではないかと考えます。

•支払が発生するときは、簡易なレシートではなく、必ず正規の領収書を発行してくれる相手から購入する⇒

受領者の身元が証明できない支払は損金にできません。個人に支払をする場合は最低限その方の身分証明書の署名済みコピー、法人に支払をする場合は当該法人の情報が記載された領収書(VATを考えれば、正規のTax Invoiceであることが望ましい)を入手しましょう。

•交際費は限度額を守って使う⇒

タイにおける交際費の損金金額上限は『総売上高と資本金のいずれか大きい額の0・3%(但し、上限1000万バーツ)』となっており、これを超えて使用した金額は損金にできません。日本でいうところの『会議費』に相当する金額も含まれることも多く、金額的にも感覚的にも、日本での金額より少ない感じがするのではないかと思われますので、うまく使用することが求められます。

•月一回“Add back Expenses” “UnclaimedVAT”勘定の中身をチェックする⇒

前者は『損金不算入費用』、後者は『VATとして使えない(仕入控除せず)、損金処理もできないVAT(例:Tax Invoiceの受領忘れ)』。どちらもイレギュラー項目なので、内容を確認することが望まれます。

•一回あたり2000バーツを超える贈答はしない⇒

一回当たり2000バーツを超える贈答に関しては損金にできません。

•月額3万6000バーツを超えるレンタカーを借りない⇒

月額3万6000バーツを超えるリース料に関しては損金にできません。

•100万バーツを超える社用車を買わない⇒

累計100万バーツを超える減価償却費は損金にできません。

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