ArayZオリジナル特集

タイの会計・税務 概観

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法人税 Q.
サービス業を実施しており、毎回顧客からの売上回収のときに源泉税が控除された金額が振り込まれてきます。この源泉税については返してもらうことができるのでしょうか。

A.支払うべき法人税額への充当または還付請求をすることができます。

タイ法人は社外の個人・法人に対して一定の所得の支払を行う際、その一定額を源泉徴収税として徴収、当該徴収額を歳入局に納付することで、当該所得の受領者が負担すべき税額の一部または全額を前払する義務があります。

これがいわゆる『源泉徴収制度』で、『一定の所得』の中にサービス料も含まれるため、御質問のケースでは毎回一定額(サービス料の場合3%)が控除された金額が振り込まれてきていると想定されます。

この点、源泉税は上記の通り『税額の前払』ですので、二つの方法で『返してもらう』ことができます。

①当該年度に源泉徴収税額を超える法人税額が発生した場合、顧客から源泉徴収された金額を法人税額に充当する⇒

例えば一年間事業を実施した結果、年間の法人税額が100だったとして、同年の源泉徴収額が30だった場合、30については『税額の前払』としてすでに支払われていることになります。よって年度末に実際に支払うべき税額は100から30を控除した70だけで良いことになります。

②当該年度に源泉徴収税額を超えない法人税額しか発生しなかった場合、還付請求を行う⇒

例えば一年間事業を実施した結果、年間の法人税額が100だったとして、同年の源泉徴収額が150だった場合を考えてみましょう。年間の法人税額全額の100については『税額の前払』としてすでに支払われていることになる一方、50については税金の払いすぎになっていることになりますので、この金額については、所謂税額の還付請求を実施することで、『返してもらう』ことができます。

他方、②のケースで還付請求を行う場合、通常税務調査が入り、還付請求をした税務項目のみならず、他の税務項目に関しても調査を受けることとなり、結果として還付請求をした通りに還付がなされない場合も見られます。これを防ぐためには、そもそも還付請求が必要な状況を作らないようにすることです。還付にあたっては専門家との協業の上、還付が思った通りになるよう準備したうえで還付請求を行うようにするといった対応が求められます。

法人税 Q.
タイでも移転価格税制が導入されるという話を聞きましたが、タイにおける現状について教えてください。

A.法案が閣議決定されており、施行に向けて進んでいます。

そもそも移転価格税制とは、資本や人的に支配関係にない企業間(独立企業間)で取引される価格と、資本や人的に支配関係にある企業間で取引される価格が異なる場合、支配関係にある企業間で取引される価格が独立企業間における価格で行われたものとして課税所得金額を算定する税制です。

簡単な適用例でいえば、親子間取引と他の会社との取引で金額が異なり、その差異に合理的な理由がない場合、他の会社との取引の金額が正しいとみなして課税する、といったケースが挙げられます。

2018年1月3日、タイ内閣は移転価格税制に関する法令案を可決し、その法令案では以下のように定められています。

•関連者との取引金額等を含む関連者との取引に関する情報を付したレポート(関連者間取引に関する付表)を、法人税申告書の提出期限までに提出すること。ただし、当該年度の取引金額が3000万バーツを超えない場合を除く。

•タイ歳入局は、関連者間取引に関する付表の提出日から5年以内に、移転価格の算定・分析に必要な文書もしくは証憑の提出を求めることがある。提出を求められた納税者は、その通知を受けた日から当該文書もしくは証憑を60日以内に提出しなければならない。ただし、税務調査官はその裁量により、通知日から120日を超えない範囲でその提出期限を延長することができる。

•書類の要求に対する懈怠がある場合、最大20万バーツの罰金とする。

•当該法令は、2017年1月1日以降開始する会計年度から適用する。

一方で、現時点で当該法令案は法令として最終確定しておらず、施行の時期も未定です。『関連者間取引に関する付表』のフォーマットがいまだ発表されていないことや、法令案をそのまま適用すると、2017年12月31日に終了する会計年度に係る法人税申告書の提出期限(2018年5月30日)までに『関連者間取引に関する付表』の提出を要することになります。現状実際の運用にあたっての詳細は不透明な部分が多くありますが、状況のアップデートに努めることが肝要です。

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