ArayZオリジナル特集

産業集積、消費市場としてのタイ+1 CLMVの基礎知識&最新事情

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ミャンマー編

arayz apr 2016

東南アジア最後のフロンティア

ミャンマーが注目を浴びている理由の一つに、インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイに次ぐASEANで5番目に多い、5148万人という人口数が挙げられる。人口ピラミッドは20〜25歳のレンジが最も多く、識字率も89.5%(男性92.6%、女性86.9%)と高い。生産年齢人口は約3300万人、今後も増加が見込まれている。
豊富で若い労働力を求める産業界と、東南アジアでも成長の伸びしろ溢れる市場を求める消費財やサービス業界、双方の目的を持った各国企業から投資が相次ぐ一方で、開発途上のインフラや交代したばかりの政権による制度の変化など、慎重な検討が求められる投
資先でもある。

ミャンマー投資の概要

外国投資を奨励する法律には、外国投資法と経済特区法がある。
外国投資法に基づき投資許可を取得した会社に対しては、代表的な租税減免措置として、商品生産またはサービス提供を行うすべての事業について、商業的規模で事業を開始した年を含み5年間の所得税が免除される。国に利益をもたらす事業の場合は、投資対象の事業の成功度合いに応じて、相当と考えられる期間の所得税が減免される(外国投資法27条)。
また、土地の長期賃貸借については50年まで可能で、さらに10年の延長が2回まで認められている(外国投資法31条、32条)。
経済特区法に基づいて投資許可を取得した、投資家および開発者に対する租税優遇措置には次のようなものがある(経済特区法32条、40条、44条、45条、48条、49条、50条、51条、52条)。

①投資家(フリーゾーン):営業開始日から7年間所得税が免税。次の5年間の所得税が半額に減額される。事業の利益の再投資を1年以内に行って得た利益については、次の5年間の所得税が半額に減額される。

②投資家(プロモーションゾーン):営業開始日から5年間の所得税が免税。
次の5年間の所得税が半額に減額される。事業の利益の再投資を1年以内に行って得た利益については、次の5年間の所得税が半額に減額される。

③開発者:営業開始日から8年間の所得税が免税。次の5年間の所得税が半額に減額される。事業の利益の再投資を1年以内に行ったことで得た利益については、次の5年間の所得税が半額に減額される(※)。

投資促進機関であるミャンマー投資委員会( Myanmar Investment Commision:MIC)は、国家計画経済開発省・投資企業管理局(MNPED・DICA)が事務局を担っている。DICA内には日本人アドバイザーが常駐する「ジャパンデスク」がある。

日・タイ・ミャンマーで進めるダウェー開発

日本、ミャンマー、タイの3ヵ国は2015年7月4日、東南アジア最大規模となる「ダウェー経済特区(SEZ)」の開発協力に関する意図表明覚書に署名。メコン地域内外における総合的な経済開発の促進および連結性の強化を図っていく上で、ダウェーSEZプロジェクト(以下、プロジェクト)の包括的な開発のための3ヵ国による協力が重要であるとの認識で一致した。覚書の主な内容はプロジェクトに対する出資、技術的連携、幹線道路建設となっている。
日本は本格開発事業における、タイからダウェーへと抜ける新規幹線道路の建設に関して、事前事業化調査(プレF/S)を実施していく。この幹線道路建設は、この道路を使用する産業にとって利便性の高いものである必要があることから、現在は二車線道路が計画されている。また、電力、通信、水などのインフラ整備も行っていく予定だ。また、環境および社会への影響を考慮しながら、国際基準に沿った経済特区にするということが3ヵ国の共通認識となっている。
15年12月14日、ミャンマー、タイ両国政府が設立した「ダウェー経済特別区(SEZ)開発会社」に、ミャンマー・タイ・日本が同等の比率で出資することが決まり、バンコクで株主間契約に調印している。

(※)「フリーゾーン」は、ミャンマーの外側と看做され、管理委員会により指定され、輸入関税が課せられない。また、フリーゾーン事業地域、製造地域、運搬および供給地域、国際卸売取引地域が含まれる。「プロモーションゾーン」とは、関税地域であり、かつ、フリーゾーン以外の経済特区内の地域または以下に定義されるその他の事業。「投資家」とは、経済特区で事業を行うことについて管理委員会から許可された国民、外国人または合弁会社。「開発者」とは、経済特区におけるインフラの整備、事業の運営および維持を行うものとして管理委員会に認められた個人または会社。

【参考】
日本・外務省ウェブサイト(www.mofa.go.jp/mofaj/area/myanmar/
日本貿易振興機構(ジェトロ)ウェブサイト(www.jetro.go.jp/world/asia/mm/
ミャンマー労務ガイドブック 2015年10月(ジェトロ・ヤンゴン事務所)

 

ミャンマー・ヤンゴンに法律事務所を構える、堤 雄史日本国弁護士に聞いた
日系企業の目線で見るミャンマー進出

arayz apr 2016
堤 雄史 日本国弁護士

―法律面におけるミャンマー進出の魅力とは?

ミャンマー進出する際に知っておくべき法律として、会社法、外国投資法、経済特区法、労働関連法が挙げられます。法務面でタイと比較すると、サービス業(一部の分野を除く)において、外資100%での進出が認められること、会社法のみに基づく会社の場合には現地国民の雇用義務がないこと、税金制度がタイより簡潔なことなどが魅力と感じられます。
政局については、選挙も無事に終わり安定していると思われますが、2015年11月の総選挙で勝利したNLDは政権をこれまで担った経験がないため、知識不足などが懸念されています。また、輸出入、海外送金、外資規制が運用によって頻繁に担当官の対応が異なる点にも留意が必要です。

―ミャンマーの労働法務、人材の状況は?

労働法務における基本的な法律として、工場法、休暇および休日、労働組織法、労働紛争解決法、社会保障法、最低賃金法、雇用及び技術向上法、賃金支払法、店舗及び商業施設法などが挙げられます。
採用に関しては、最低賃金が1日(8時間労働の場合)当たり3,600チャット(約360円)と規定されており、タイ、カンボジア、ベトナムなどと比較しても低額であること、また、比較的勤勉で親日的なことがメリットとしてあります。ただし、軍事政権が長く続
いたため、その当時の教育は質が低く、管理者クラスの人材が少ない状態にあります。また、タイと同様に会社への帰属意識が薄く、転職が盛んであり、育成した人材を会社に留めることに苦労している企業が多いようです。

―日系企業のミャンマー投資の現況は?

ミャンマー日本商工会議所加入企業数は合計286社(2016年1月末時点)で、内訳は建設82社、流通サービス76社、工業61社、運輸31社、貿易24社、保険金融12社となりま
す。
ODAや新たなビルやホテルの建築需要を見込んで、建設業の会社が多く進出している傾向にあります。また、外資100%でも進出が容易であることから、日本のサービスをミャンマーの富裕層および外国人の駐在員向けに提供しようというサービス業の進出も多く見られます。他方、大型の投資案件については、外国投資法の投資許可が必要です。ミャンマー投資委員会(Myanmar Investment Committee:MIC)のメンバーは副大臣などで構成されており、今後メンバーが変更される可能性が高いことなどから、新政権に完全に移行する16年4月までは、具体的な申請を控えようとする企業もあるようです。

―ミャンマー進出を検討する企業に耳よりな情報を教えてください。

日本とミャンマーの官民で開発を支援、ミャンマー初の経済特区として稼働しているヤンゴン近郊のティラワ経済特区(SEZ)に、多くの日系企業が進出を決めています。具体的な入居決定日系企業数(2016年2月16日時点)は、土地サブリース契約済みが23社(全47社)、土地予約済みが9社(全15社)となります。
インフラ面では、インターネット環境が年々改善されつつあります。
また、不動産の賃料についてもようやく値上げが止まりつつあり、次々と新しいオフィスビルなども建築されていることから、賃料は下がると予想されています。

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