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TPPからのシフト、アジアのメガFTA 東南アジア地域包括的経済連携 RCEPとは

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ASEAN10カ国と日中韓豪印NZが交渉に参加し、アジアの貿易自由化を目指すRCEP(東アジア地域包括的経済連携)。
アメリカが今年1月に離脱表明をしたことで、発効の目処が立たなくなったTPP(環太平洋パートナーシップ協定)と比較しながら、RCEPの基本概要とその目的、交渉の進捗状況を追う。

RCEPの概要と構想

RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership、東アジア地域包括的経済連携)の交渉に参加しているのは、ASEAN10ヵ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)に日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6ヵ国を合わせた、計16ヵ国だ。RCEPの発効が実現すれば、人口約34億人(世界全体の約半分)、GDP約20兆ドル(世界全体の約3割)、貿易総額10兆ドル(世界全体の約3割)の広域経済圏が出現することになる(数値は2017年の日本・外務省発表資料に基づく)。

日本はすでに08〜09年にかけて、ASEANとの間でAJCEP(日本・ASEAN経済連携協定)を締結しており、中国、韓国、インド、オーストラリア・ニュージーランドもまた、それぞれにASEANとFTA(自由貿易協定)を締結している(※1)。これら既存のFTAを超える水準で、かつ広域な協定の出現は、参加国間における貿易・投資のさらなる促進や、地域におけるサプライチェーンの拡大など、日本の経済成長を維持・増進していくために不可欠なものになると期待されている(図表1)。

RCEPは05年4月に開始された、中国の提案による東アジア自由貿易圏構想(EAFTA、ASEAN+3)の民間研究と、07年6月に日本が提案した東アジア包括的経済連携構想(CEPEA、ASEAN+6)の民間研究、2つの潮流が合わさっている(※2)。

ASEAN側は10年9月にASEAN+3とASEAN+6、双方に関する「原産地規則」、「関税品目表」、「税関手続」、「経済協力」の4つの作業部会において域外国も交えた議論を開始し、11年8月には日中が共同提案として、ASEAN+3とASEAN+6、双方に関する3つの作業部会の設立をASEAN側に提案した。ASEAN側は日中共同提案を踏まえ、3ヵ月後となる11月、東アジア首脳会合・ASEAN+3首脳会合において、ASEAN+3とASEAN+6を区別しない、新たな枠組みとしてRCEP構想を提案し、16ヵ国の間で貿易・投資自由化に関する「物品貿易」、「サービス貿易」、「投資」の3作業部会を設立することで一致した。これより、RCEPの枠組みの下での、広域経済連携に関する具体的な検討が本格化する。

(※1)◆EPA(経済連携協定)とFTA(自由貿易協定)

日本・経済産業省の定義によれば、関税の撤廃・削減を求めるFTAに対し、EPAでは関税だけでなく知的財産の保護や投資ルールの整備なども含める。

(※2)◆東アジア自由貿易圏構想と東アジア包括的経済連携構想

ASEAN+3においては、2002年にEASG(東アジアスタディーグループ)が東アジアの共同体実現に向け、短期的/中長期的に実現すべき具体的方策をとりまとめ、そのうち、中長期的に実現すべき項目として「東アジア自由貿易地域(EAFTA)」が掲げられた。この方策を元に、05年4月には、EAFTAの共同専門家研究会が開始され、09年のASEAN+3経済大臣会合および首脳会合で報告された。

ASEAN+6においては、2005年12月、ASEAN+6を参加国とする「東アジア首脳会議(EAS)」が初めて開催され、EASがこの地域における共同体形成に「重要な役割(significant role)」を果たすことなどを確認する共同宣言が発出された。日本は06年8月、ASEAN+6の経済実態としての結びつきの強まりや、ASEANと日本、中国、韓国、インド、オーストラリアおよびニュージーランドによるFTAの締結の進展により、16ヵ国による「東アジア包括的経済連携(CEPEA)」構想の専門家研究会を提案。07年6月からCEPEAの民間研究会が開催され、09年のASEAN+6経済大臣会合および第4回EASにおいて最終報告された。この会合で、民間研究の成果を政府間で議論・検討すると決定し、EAFTA構想と並行して政府間の議論に移行していくことが確認された。

次ページ:RCEP交渉の進捗

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