【連載】藪本 雄登氏がアドバイス! 新興メコンの最新法務事情 Vol.2

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◆カンボジア編 労働仲裁に関する法制度

カンボジアでは2002年に「仲裁評議会」(Arbitration Council)が設立され、当評議会により集団労働争議に関する仲裁が行われています。この組織の特徴は労働者側、雇用者側、労働省の三者間で任命される人物から構成されるところにあります。それらの三者は相互に独立・中立・不干渉の立場を守り、仲裁評議会を運営していく必要があります。
また、三者で任命される人物から「労働仲裁委員会」(Arbitration Panel)が結成され、実際の仲裁が実施されています。この委員会の判決は紛争両当事者のみならず、その他の全ての紛争に対しても、法的かつ拘束力の有るものとして効力を生じる、と規定されています(労働法第312条)。
進行の流れとしては、労働仲裁委員会は労働省から紛争を受託してから15日以内に判決を下し、紛争当事者にそれを通知する必要があります。協議の末、委員会が判決を下すと、その判決の結果は労働大臣の名で仲裁評議会より紛争当事者に通知されます(労働省第313条)。
紛争当事者は委員会が判決を下す前に、その判決結果について拘束力が有するのか、否かを選択するように委員会より要求されます。もし、紛争両当事者が拘束力の有る判決を要求していた場合は、両当事者はその判決結果に対しては以後、異議を述べることは許されず、その判決結果がそのまま有効となります。他方、拘束力の無い判決を要求し、判決に対し両当事者が異を述べない場合は、その判決がそのまま有効となりますが、紛争両当事者あるいは一方が判決結果に異議を述べることもでき、その場合は、紛争両当事者は当判決に拘束されず、裁判所に付託するなどの別の方法で、紛争処理にあたることができます。

 

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◆ラオス編 外資規制

2009年のラオス投資奨励法(以下、「新投資法」という)は内外資の区別をせずに、広く投資を奨励することを明記しています。しかしながら、新投資法は2004年外国投資奨励法に引き続き、投資を奨励しない例外的分野として、「短期的あるいは長期的に国家の安全保障に関わったり、自然環境に悪影響を与える地域や事業、または公衆衛生や国民文化に外を与える事業」を挙げています。また投資禁止分野として、麻薬製造、調査・治安維持活動、中央銀行業務、外交や国防、政治的活動などが設定されており、外国投資家の参入は禁じられています。
ラオスへの投資は原則として外資100%出資が可能であり、合弁企業の会社設立の出資比率は最低30%と規定されています。ただし、鉱業や水力発電などコンセッション事業への投資は契約で出資比率を記す場合があります。
条件付き外国投資許可分野は個別に定められていますが、アルコール・ビール製造、医薬品製造、自動車製造、飲料・タバコの卸売、機械・設備の卸売はラオス人の資本参加が求められています。上記以外にも法令等で明記されていない事実上の外資制限分野もあり、必ず個別確認を行った方が良いでしょう。また、管轄省庁、会計事務所や法律事務所でも回答が異なるケースも多く、複数筋からの情報獲得がラオス進出には必要不可欠です。

 

Yabumoto
JBL Mekong代表・藪本 雄登
カンボジアで数年間の実務経験を有し、ラオス提携事務所を往復しながら、新興メコン法務全般に従事。新興メコン地域の法務に関する知識と実務経験をもとに、メコン地域への進出戦略の策定、進出時のリーガルフォロー、紛争発生時の対応などを執り行う。
【主な著書・執筆実績】
『カンボジアで事業を興す』(キョーハンブックス、2014年6月)
『カンボジア進出・展開・撤退の実務』(同文舘出版、2014年4月)
『カンボジア会社設立マニュアル』(日系公的機関より受託)
『カンボジア労務マニュアル 第2改訂版』(日系公的機関より受託)
『ラオス労働法』(日系公的機関より受託)

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